WORKS
広報・広告の翻訳
広報・広告代理店で受注している翻訳の例をご紹介します。
翻訳者に求めるのは、日本語のライティングスキルと柔軟な対応力
■株式会社PDSインターナショナル:
弊社では広報・広告代理店として、基本業務に付随するサービスで翻訳を引き受けています。売上高全体に占める翻訳サービスの比率は5%程度と決して高くはありませんが、競合の代理店との差別化をはかるうえで、翻訳はきわめて重要な役割を果たしています。これまでに貿易振興機関や外資系自動車メーカー、IT関連の外資系大手企業などとエージェンシー契約を締結してきました。
翻訳サービスの主体となっているのは、クライアントのニュースリリース、記者発表用資料、広報用資料、技術資料(ホワイトペーパーなど)、ウェブコンテンツ、ビデオスクリプト、ニュースレターなどの英文和訳です。これらの案件には1件あたりのボリュームが小さいものが多く、「多品種少量」であることが特徴です。
技術翻訳の要素が強い案件の場合、翻訳業界の相場を考慮した翻訳単価を設定していますが、広告コピーなどの場合はコピー作成料を含めるという考え方で、ワードあたりの単価にすると2,000円以上に設定する場合があります。こういった案件で重要になるのはコピー作成力ですが、そこに弊社の強みがあります。弊社ではレビュー、リライトは3回以上行うことが多いですが、広告コピーの場合は5回ほど、複数の人間の目でレビューすることもあります。
クライアントとの契約によっては迅速な対応が必要なので、スピードも肝心。重要なニュースリリースの場合は2~3時間での納品が必要で、決まった時間帯に待機を求められるケースもあります。内容的には、技術用語などある程度の専門知識が求められるうえ、会計やビジネスの知識、社会一般に関する広範な知識を求められるケースもあります。
相場に比べると翻訳料金を高く設定しており、そのぶん外部の翻訳者にお願いするときもさまざまなスキルや対応力を求めています。具体的には、日本語のライティングスキル、広告コピーやニュースリリース特有のスタイルへの習熟、クライアントの修正要求に対する柔軟な対応、短納期対応、といったことです。
ニュースリリースは読みやすさが最優先
広告はレイアウトを重視
■翻訳者 花嶋みのりさん:
オーストリアでインターンシップに参加したとき、観光局の日本向け広報代理業務などを行う企業で、観光地やホテルのパンフレットの独文・英文和訳を担当しました。この経験を通じて、情報を発信する広報業務と翻訳に興味を持ち、帰国後、その両方に携われるPDSインターナショナルに入社しました。外資系半導体メーカーの広報関連資料や広告の英文和訳のチェック業務を3年ほど経験し、翻訳も担当するようになりました。
私が英文和訳やチェックに関わっているコンテンツを挙げると、メディア向けのニュースリリース、記者発表用資料があります。ニュースリリースは忙しい記者の方が記事でとりあげやすいよう、読みやすさ最優先で、簡潔で自然な日本語にするように気をつけています。記者発表用資料、中でもプレゼンテーション用のスライドは、レイアウトを重視してできる限り短い文言にまとめます。そのまま配布できる状態で納品しますので、必要に応じて、改行位置、行間、フォントサイズの調整も行います。
そのほか、クライアントのお客様であるエンジニアに向けたウェブコンテンツ、ビデオスクリプト、広告(雑誌、オンラインバナーなど)があります。ビデオスクリプトは企業紹介や製品紹介に関するもので、字幕や吹替用に翻訳するため、まさに映像翻訳と同じ注意点が求められます。広告はレイアウトが重要ですが、もとの文字量が多いと、英語では美しく見えても日本語に訳すと文字が詰まって見づらいケースがあります。その場合、原文が箇条書きでなくても日本語では箇条書きに変えるなどの工夫をして見やすくします。また、英語のコピーが命令形や疑問形であっても、直訳では不自然という場合はまったく別の日本語に変えて製品の特長を伝えることもあります。一つの製品に関して複数種類の翻訳を同時に頼まれるケースも多く、その場合はすべて訳語を統一し、製品発表のメッセージが伝わるようにします。
入社当時は、半導体に関する知識はゼロでした。クライアントのウェブサイト、カタログ、過去のニュースリリースの原文と訳文をまとめたデータベースなどを参照しながら、広報関連資料や広告の翻訳に必要な知識をつけていきました。また広報関連、特にニュースリリースには特有の文章スタイルがあるので、真似をすることから始めて慣れていきました。同時に、上司の細やかな指導を通じて、資料の用途を考慮した上での適切な訳語、表記、文体の選び方を学びました。広告の翻訳はコピー作成の要素が強いので、新聞、雑誌、電車の中吊り広告やインターネットのニュースサイトの見出しをチェックするなど、言葉に敏感でいるように心がけています。
最近は情報収集やネットワーク構築のため、翻訳関連のセミナー、勉強会、懇親会などにできるだけ参加しています。皆さんとても勉強熱心で大きな刺激を受けるとともに、自分には言葉に対する真摯さが足りないと痛感しています。原文の単語の意味を調べきって理解しているのか、なぜその訳語を選ぶのか、といったことを意識しながら、将来的にはさまざまな分野の広報・広告関連翻訳ができるよう、スキルを磨いていきたいと思います。
取材協力
株式会社PDSインターナショナル
ウェブマーケティングやイベント企画など、総合的なマーケティング代理店サービスを提供する広報・広告エージェンシー。
花嶋みのりさん
大学でイギリス文学を専攻後、航空会社での勤務、オーストリアでのインターンシップ参加を経て、PDSインターナショナルへ入社。広報関連資料や広告の英文和訳を行う。フェロー・アカデミーの通信講座マスターコース「IT・テクニカル」「ビジネス英訳」を受講。