WORKS
サスティナブルな翻訳者を目指そう
環境分野の翻訳にはどのようなものがあるのか?
■有限会社エコネットワークス 二口芳彗子さん
・企業の環境問題解決への取り組みのアピール
・CSR(企業の社会的責任)に関わる取り組み
・サステナビリティ(持続可能性)に関わる取り組み
・CSRやサステナビリティに関する資料
などの翻訳の需要があります。
また気候変動や生物多様性などの専門的な資料も一定の需要があり、エネルギー関連の翻訳も温室効果ガスの排出量削減の取り組みと密接に関わる形で需要があります。
企業や行政は、グローバルなトレンドや議論を海外の報告書や資料からも把握した上で、それぞれの活動を発信するため、内部用にトレンドを正確におさえるための翻訳(主に英日訳)と、伝わる発信となる翻訳(日英をはじめ多言語への訳)の両方が必要です。
日本語と翻訳言語の両方で、奥深い理解力と幅広い表現力を兼ね備えた翻訳者の方が作り上げる訳文が必要です。クライアントが「何を」伝えたいのかをしっかりと理解して仕上げた訳文が求められているからです。
それから丁寧にリサーチすることも大切です。
例えばいくつか選択肢があったとしても、そのリサーチに基づいて検討し、最も良い訳文を提案することが求められます。
企業からの依頼となると、翻訳を1人で行うケースもあれば、複数のチームで進める場合もあります。
複数の場合、チームメンバーと正確・丁寧なコミュニケーションをとるためにも、訴えたいこと理解し、多くの情報を得て翻訳に臨むことが大切です。
環境翻訳は、世界に役立つ有意義な仕事
■前田真砂子さん
私は大学卒業後、建設コンサルタント会社で4年ほど環境アセスメントの仕事に従事していた頃から翻訳に興味を持つようになり、アメリカに留学しました。帰国後は米国企業の日本法人に就職し、システム開発のプロジェクトマネジャーにキャリアチェンジしましたが、結婚・出産後は夫の仕事の関係でつくばに居を構えたこともあり、それまでと同じ働き方を続けるのが難しくなりました。悩んだ末に「これからは自分のペースで好きなことをしよう」と退社を決め、国立研究所でライフサイエンス分野の研究補助をしつつ、英語と翻訳の学習を本格的に再開しました。そこは毎日定時に出勤・退社できる環境だったので、育児との両立や勉強時間の確保が容易になりました。
翻訳学習においては、これまで自分が携わってきた実務分野で実績を積もうと、フェロー・アカデミーの通信講座でIT分野やメディカル分野の翻訳を選びました。そして、当時フェローで開講された二口さんの短期集中講座の受講をきっかけに、エコネットワークスのトライアルに合格し、和訳案件をいくつかお手伝いさせていただくことになったんです。その後、フリーランス翻訳者として独立したタイミングから、環境翻訳の仕事に深く関わるようになりました。
エコネットワークスでは環境やサステナビリティに関連するさまざまなサービスを提供していて、私は主に翻訳プロジェクトをお手伝いしています。スタッフの皆さんは、遠隔地に住んでいらっしゃる方がほとんどですが、隔週で業務全般の打合せをしているほか、プロジェクト期間中はメンバーと電話やSkype、メールで密に連絡を取り合っています。翻訳者を志した当初は雑誌や書籍の翻訳に憧れがありましたが、このようにチームで訳文を作り上げていく過程に大きなやりがいを感じるようになりました。
担当している案件は、大きなものにはグローバル企業のCSRレポートや環境年次レポートがあります。これは各社が1年間の環境への取り組みなどをステークホルダー向けにまとめたもので、エコネットワークスではその英語版制作を支援しています。ほかには、グローバルメーカーの環境ドキュメンタリー・シリーズ英訳、ESD(Education for Sustainable Development)や気候変動に関する書籍の英訳、自然エネルギーに関する欧州メディア記事の和訳などもあります。私はITに関する勉強もしてきましたが、ITの知識は環境に限らず実務翻訳全般で役立つ場面が多いように思います。企業の環境取り組み報告でも、IT技術を駆使して業務の効率化やプロセスの改善を図った事例などは頻繁に登場します。
環境に関してはネガティブな報告もありますが、持続可能な地球環境の実現に向けて世界中の国や企業・組織がさまざまな取り組みを行っています。翻訳作業を通じてこうした努力や進展を知ると、とても前向きな気持ちになります。また、世界の取り組みを日本に紹介し、日本の取り組みを世界に発信するお手伝いができる、非常に意義のあるお仕事だと思います。