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ビジネスシーンで必要な英語力とは?
英語を使ったコミュニケーションを向上させる
アップルやディズニーといった外資系企業に勤務していた頃、日々の業務はもちろん英語でしたが、部下や同僚には非英語ネイティブも多くいました。そういったビジネスシーンで大事なのは、5W1H+how muchといったビジネス上必要十分な事項が的確に相手に伝わっているか、コミュニケーションが円滑にとれているか、その上で信頼関係が築けているかということです。英語を上手に話すことが目的なのではなく英語を使ってしっかり仕事 を進めることが目的です。
100くらいの例文を覚えていれば相手に何とか通じますし、それを繰り返し使っても良いと思うのですが、「もっと、こういうことを言いたい」ということが必ず出てきます。私たちは学生時代に受験のために英語をみっちり勉強しますが、身につけた知識を実際に使う機会がなく英語から離れていく人が多数です。そんな人たちのために、最低限必要なスキルをまとめたのが『グロービッシュ・コミュニケーション術』という本です。「英語が社内公用語になった」など会社のやむを得ない事情で、英語を再び勉強することになったという方が、効率よく楽しみながら学べる1冊です。
さらにワンランク上のスキルを手に入れたいと思った場合、組織のリーダーや意思決定者の言葉を知ると良いでしょう。印象深い優れたリーダーは、明るく素晴らしい未来へのビジョンを見せるため「言葉の力」によって人々を率います。人を動かすフレーズ、信頼を得るフレーズ、効果的でユーモラスなフレーズなど状況に応じて適切なコミュニケーションを駆使することが必要となる立場ですし、その機会が多くありますから自然と表現力が豊かになるのです。そういったフレーズをまとめたのが『リーダーとして話すための英語パワーフレーズ3000』です。
「ビジネスコミュニケーション」と「英訳」
ビジネス上のコミュニケーションの場合は、翻訳に比べて、「話す」「聞く」も大きな比重を占めます。話したり聞いたりする能力には瞬発力が必要で、しかもスピードが勝負ですから、要点をかいつまんだり、大きく意味を捉えたりする力が必要になります。
翻訳の場合は、「読む」「書く」の比重が大きく、繰り返し読んで考えたり、細部の表現にこだわったり、事実関係を丹念に調べて正確性を研ぎ澄ますことが大切です。二つの作業は根源的には同じですが、違う頭の使い方、訓練方法が求められます。ブランクがあくとどちらの能力も、勘のようなものが鈍るので、私も1日のうち決まった時間は、書き物の翻訳や、音声を出しての同時通訳の業務に当てるようにしています。
ちなみに私の翻訳業務では、各省庁の白書や新聞といったファクトベースの文書を扱うことが多いです。「アメリカの住宅に合わせたパソコンの大きさは、狭い日本の住宅事情に適さない」というマーケティング調査結果を本社に報告するため、住宅白書を英訳したこともありました。
英訳に必要なこと
たとえば「白書」は、1つの文章に多くのことが盛り込まれており、一読して何が言いたいのかが、わかりづらい。しかし伝えたい内容はしっかりあります。このようなわかりにくい表現は、明快な日本語に置き換え、英訳する、という手順が必要で、英訳にあたって大事なのは主語、動詞、構文や使う単語を適切に選ぶこと、そして英語のリズムを作り出すことです。
そういった英訳スキルを鍛えるためには、まず多読が必要です。技術やサービスに関する文書、契約書、新聞、小説、論文などさまざまな英語の文章に触れてみてください。それから音読です。英語を理解するスピードを上げる、英語のリズムを会得する、といったことのための基本的な方法です。あえて辞書なしで読むと決めて、不明な単語は推測するというのもおすすめです。
取材協力
- 阿部川久広さん
- アップル、ディズニーなど外資系企業にてマーケティング、マネージメントの要職を歴任。通訳・翻訳を含む英語関連業務にも従事。多くのグローバル企業や神戸大学、立教大学などでマーケティング論、プレゼンテーション、英語コミュニケーションなどに関する講義も行う。元CNNキャスター。翻訳書に『次の会議までに読んでおくように!』(すばる舎)、著書に『たった3時間でやれる「勘違い英語」完全克服術』(講談社)などがある。