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reco本リレー【33】八木恭子さんのreco本
『レイン:雨を抱きしめて』
「次はなんの本を読もうかな」と思ったら、ぜひreco本を手に取ってみてください。
バトンが誰に渡るのかも、お楽しみに!
八木恭子さんのreco本
- 八木恭子さんのプロフィール:
- 文芸翻訳家。キョウ・マクレア文/ジュリー・モースタッド絵『ショッキングピンク・ショック!―伝説のファッションデザイナー エルザ・スキャパレリの物語』、ロン・ロイ「ぼくらのミステリータウン」シリーズ、ジョージ・デイリー『ロンドンパブスタイル英国パブカルチャー&建築インテリア』、アリー・クラーク『ランナーのきみへ モチベーションがあがる”励まし&”名言集』などの訳書を持つ。
この作品の読みどころ
主人公のローズは、もうすぐ12歳になる女の子。パパとふたり暮らしで、雨の日にパパが見つけた「レイン」という名前の犬を飼っている。ほかに2つも同音異義語がある特別な名前だ(reinとreign)。ローズは高機能自閉症と診断されていて、言葉(とくに同音異義語)と数字(とくに素数)とルールに強いこだわりがあり、周囲にうまく溶けこめずにいる。学校ではつねに介助員の女性に付き添われ、週代わりで決められたクラスメイトとランチを食べる。近所の自動車修理工場で働くパパは、ローズへの接し方がわからず、家を空けることも多い。そんなローズにとって、いつもそっとそばに寄り添っていてくれるレインは大切な存在だ。
ところが巨大ハリケーンが町を襲った晩、大切なレインがいなくなってしまう。ローズは「行方不明の犬をさがす方法」を自分で考え、根気よくさがしつづける。はたしてレインは無事なのか……。
心を打つシーンが数多くあるなか、とくに印象に残った場面があった。クラスで異分子のように扱われているローズが、授業中にとつぜん泣き出したクラスの女の子を廊下につれだし、気持ちが落ち着くよう、とっておきの同音異義語を教えてあげる場面だ。なぐさめの言葉なんてなくても、ローズがその場にいるだれよりもその子の気持ちを理解し、相手にもそれがちゃんと伝わっていることがわかる。
つらいことが多い毎日をローズもまわりの大人たちも懸命に生きている。雨のようにやさしく、そして前を向く勇気をあたえてくれる物語だ。
担当編集者からのコメント
2匹のシェルティと暮らす西本かおるさん自身が念願だったと話す、犬がとても重要な役割をはたす翻訳作品です。自閉症と診断されている女の子が、行方不明になった愛犬を探すのですが、ストーリー後半、少女のくだした決断に、おどろきと切なさを感じたのを覚えています。その時のイメージをもとに、装画は、背中合わせの犬とと少女を100%ORANGEさんに描いていただきました。
小峰書店 山岸都芳さん