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reco本リレー【3】棚橋志行さんのreco本
『努力しないで作家になる方法』
『作家で十年いきのびる方法』
「次はなんの本を読もうかな」と思ったら、ぜひreco本を手に取ってみてください。
バトンが誰に渡るのかも、お楽しみに!
棚橋志行さんのreco本
棚橋志行さんのプロフィール:
1960年生まれ。東京外国語大学英米語学科卒業。出版社勤務を経て翻訳家に。J・T・ブラナン『神の起源』、SJ・ワトソン『わたしが眠りにつく前に』、クライブ・カッスラー/トマス・ペリー『マヤの古代都市を探せ!』、アンディ・マクダーモット『アトランティス殲滅計画を阻め!』、キース・リチャーズ『ライフ キース・リチャーズ自伝』、マイク・タイソン『真相 マイク・タイソン自伝』、バラク・オバマ『合衆国再生―大いなる希望を抱いて』など訳書多数。
この作品の読みどころ
1998年の文庫『邪馬台国はどこですか?』による衝撃のデビュー以来、推理作家として80余の作品を世に出してきた鯨統一郎氏。『努力しないで作家になる方法』『作家で十年いきのびる方法』の2作は氏の分身とも言える伊留香(いるか)総一郎を主人公に、作家になるまでの壮絶な日々とその後の10年の奮闘を綴った自伝的小説である。
小説が好きな人なら誰しも、一度くらいは作家になることを夢見たことがあるかもしれない。わたしもそんな一人であり、とりわけ同世代の作家が現れるたび憧憬の思いで眺めていた。しかし、作家になり、作家でありつづけるのがどれほど大変なことか、本書を通読して改めて痛感させられた。主人公は作家を志して17年間、文学賞に挑んでは跳ね返される失意の連続で、家族を支えながら、極貧にあえぐ日々も経験する。歓喜のデビューを果たしたあとには、「新人作家で10年後に残るのはひと握り」という「継続の壁」が立ちはだかる。次々襲い来る窮地を彼はいかにして切り抜け、新たな境地を切り開いていったのか? 作家業という荒波を漕ぎ渡る、汗と涙の奮戦記だ。
同時に、主人公と同世代のわたしには青春小説のような味わいも感じられた。彼が少年期に読書に目覚めて以来、遭遇し蓄積していく活字、映像、音楽等の作品はわたしにとっても人生の重要な構成要素。懐かしいタイトルが出てくるたび、甘酸っぱい思いとともに胸が熱くなった。
作家志望の方たちはもちろん、クリエイティブな業界で独り立ちしようとしている人たちに、ぜひ本書を開いていただきたい。主人公と自分を重ね合わせて、手に汗握ること請け合いだ。自伝ならではの秘話や、創作の姿勢など、読みどころ満載の2冊である。
担当編集者からのコメント
「自伝小説を書きたい」と鯨さんから提案されたのが、『努力しないで作家になる方法』企画のスタートでした。覆面作家でプロフィールも一部しか明かしていないのに、大丈夫? と思っていましたが、同業の作家さんや作家志望者の方々の多くに、共感していただきました。小説家業の実態の一部が伺え、きっと、より小説を読みたくなると思います。続編は(多分)ありませんが、鯨さんには20年30年書き続けてもらうつもりでおります!
光文社 鈴木一人さん