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reco本リレー【34】おおつかのりこさんのreco本
『リスのたんじょうび』
「次はなんの本を読もうかな」と思ったら、ぜひreco本を手に取ってみてください。
おおつかのりこさんのreco本
- 『リスのたんじょうび』
トーン・テレヘン【著】
野坂悦子【訳】
偕成社 - おおつかのりこさんのプロフィール:
文芸翻訳家。スージー・レイ『世界あっちこっちくらし探検』、ウィリアム・D・クランプ『世界のお正月百科事典』(共訳)、マット・ラマス『わたしのくらし 世界のくらし 地球にくらす7人の子どもたちのある1日』、マイケル・ボンド『モルモット・オルガの物語』『オルガとボリスとなかまたち』、デーブ・キーン『カーズ めざせ! チャンピオン』(共訳)、エム.エル・ダンハム/ララ・バーゲン『新版 ディズニー全キャラクター大事典』(共訳)などの訳書を持つ。
この作品の読みどころ
わたしたちは、朝起きてから夜ねむるまで、ずっと頭のなかをかちゃかちゃいわせて思考しています。だけど、ほんとうにだいじなことを、きちんとした質と量とで考えているかしら? この本を読んだらちょっと不安になってしまいました。
リスは、「なにもわすれることがないように」家じゅうに紙をはっています。でないと、自分の誕生日どころか、三度三度のブナの実の食事だって、頭からぬけおちかねないから。
そんなぼんやりさんだけど、誕生日のこと(あんのじょうわすれかけていたのですが)では、これでもかというほど頭をしぼります。1日かけて、ひとりももらさぬよう招待状を書いておくり、ひとりだけ返事がないのはだれか考えあぐね、その時が近づくにつれだれもこなかったら? と心配し、ひとりひとりにぴったりなケーキをつくって……。
1年でいちばんだいじな日に、だいじななかまと最高の時をすごす。きっと、リスにとってはこれぞ考えるべきことなのです。時間をかけて深く深く。
9つの小さなお話がはいったこの作品では、リスをはじめ森や海の生き物たちが、こんなふうに自分の考えるべきことを心得ています。迷いなくその思考の入り口をみつける彼らがうらやましく思えるくらいに。
最近とても忙しそうな小中学生に、それからもっと大きな人たちにも読んでほしい本です。
翻訳者 野坂悦子さんからのコメント
テレヘンさんの『リスのたんじょうび』がこんなにも愛される作品になったこと、誰よりも驚き、また喜んでいます。
8つの短編のうち、とくに表題作「リスのたんじょうび」が難しく、何度も訳し直しました。
どのお話にも、私たちの抱える根源的な孤独が隠し味として効いています。ほろ苦いユーモアや、おたがいに理解しあえたように感じる至福のときを楽しんでいただければと思います。
担当編集者からのコメント
ぼくの「たのしい」と
きみの「たのしい」が
いっしょだと、もっといい。
帯のメインコピーです。あたりまえのように人と人はちがっていて、ひとつの世界をばらばらに生きている。でもだからこそ、だれかとなにかを共有できたときのよろこびがあることを、テレヘンさんは物語のなかでさりげなく、語りかけてくれているような気がします。植田真さんのうつくしく繊細な絵もふんだんに散りばめられ、そばに置いておきたくなるかわいらしい本になりました。
偕成社 丸本智也さん