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reco本リレー【25】美馬しょうこさんのreco本
『60歳からの外国語修行 メキシコに学ぶ』
「次はなんの本を読もうかな」と思ったら、ぜひreco本を手に取ってみてください。
バトンが誰に渡るのかも、お楽しみに!
美馬しょうこさんのreco本
美馬しょうこさんのプロフィール
文芸翻訳家。アリソン・マレー『ペネロペひめと にげだしたこねこ』、アラン・ラビノヴィッツ『ジャガーとのやくそく』、ジェニー・スー・コステキ=ショー『わたしのすてきなたびする目』、スティーブ・ビンホール『ディズニー・ピクサー カーズ2 キャラクター パーフェクトガイド』(共訳)などを訳書に持つ。
この作品の読みどころ
タイトルを見るなり心が躍った。学生時代に留学しなかったことを未だ後悔している身としては、「60歳から」「外国語修行」「メキシコ」とくれば、読むしかない。しかもあの青山南さんによる語学留学体験記だ。面白くないはずがない。
タイトルの通り本書では、スペイン語に関する話題や、著者がメキシコで体験した生の情報がユーモアたっぷりに描かれている。ホームステイ初日に話題に出た「テンプラ」が、日本料理でも何でもなく 、実は”templano” (テンプラーノ/早い)だったとか、“OXXO” (オクソ)というコンビニチェーン店や “Bimbo”(ビンボ) という有名なパンのブランドから「お、糞」「貧乏」を連想する話など、数々のエピソードに思わず頬が緩んだ。また、耳から語学を学ぶ自らの姿を子どもが言葉を習得する過程と照らし合わせて考察したり、日本ではあまり知られていないメキシコの歴史や文化にも触れたりしている点は、非常に興味深かった。話題ごとにスペイン語のミニ知識がついているのも初学者にはためになる。
本を閉じ、ふうとため息をつく。日本では、60歳を越えて新たな言葉を学ぶなんてあり得ないと思われがちだが、メキシコではそうではない。日々の忙しさに追われ、新たな挑戦は無理だと思い込んでいた私に、この本は『やりたいことをやればいい。年なんて気にしなくていい』とまっすぐに語りかけてきた。本を読み、活力を得る。これぞ読書の醍醐味だ。
担当編集者からのコメント
アメリカ文学翻訳の名手として知られる著者が「NHKの語学講座に何度も挫折した」と聞いてビックリ(なんという親近感)。まさしく抱腹絶倒の語学留学体験記です。極上のエッセイを楽しむ中に、「言語を学ぶこと」「知らない文化を知ること」って何だろう? と考えさせられる、まさに現場からのヒントがたくさん。「60歳からの」と銘打っていますが、もちろん、年齢を問わずオススメです!
岩波書店 古川義子さん