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reco本リレー【5】栗木さつきさんのreco本
『ベスト・ストーリーズⅠ ぴょんぴょんウサギ球』
「次はなんの本を読もうかな」と思ったら、ぜひreco本を手に取ってみてください。
バトンが誰に渡るのかも、お楽しみに!
栗木さつきさんのreco本
栗木さつきさんのプロフィール:
文芸翻訳家。慶應義塾大学経済学部卒業。ヘンリー・マーシュ『脳外科医マーシュの告白』、トレーシー・アロウェイ/ロス・アロウェイ『脳のワーキングメモリを鍛える!』、サイモン・シネック『WHYから始めよ!』、ジャック・シェーファー/マーヴィン・カーリンズ『元FBI捜査官が教える「心を支配する」方法』、デイヴィッド・ドーサ『オスカー――天国への旅立ちを知らせる猫』、ダン・シロカー/ピート・クーメン『部長、その勘はズレてます!』など訳書多数。
この作品の読みどころ
≪ニューヨーカー≫掲載の傑作をかの若島正氏が選りすぐった短編集だ。収録作家は、リング・ラードナー、E・B・ホワイト、ジョン・コリア、シャーリィ・ジャクスン、ジェイムズ・サーバー、ジョン・チーヴァーなど。そして翻訳者に名を連ねるのは、岸本佐知子、柴田元幸、片岡義男、古屋美登里、若島正などの各氏である。もくじでこうした作家や翻訳者の名前を目にしただけで、もう幸せな気持ちになる。幸福な読書体験がすでに約束されているからだ。
編者あとがきにあるように「最も都会的な雑誌『ニューヨーカー』」に掲載された短編小説の短編集は、1960年代後半から日本でも邦訳が何作か出版され、私も10代の頃からむさぼるように読みはじめた。そこには日常生活の哀歓がユーモアと皮肉をまじえて描かれており、まるで登場人物たちが暮らす集合住宅の窓からそっとなかを覗かせてもらったような気がしたものだ。ニューヨーカーの短編集は、私にとって、いわばアメリカ現代文学への招待状だった。気にいった作家がいたら、この窓をあけてはいっておいで。豊かな世界が広がっているよ。そんなふうにやさしく声をかけてもらったような感覚を覚えた。
私はおそるおそる、その窓をあけた。そしていま、翻訳という仕事にたずさわることができている。本書には個性あふれる短編が詰まっている。なかでもアーウィン・ショーの『救命具』はさすがだった。各短編に添えられている≪ニューヨーカー≫の表紙の装丁もすばらしい。本シリーズは全3巻の予定で、現在、2巻目の『ベスト・ストーリーズⅡ 蛇の靴』まで刊行されている(2016年8月現在)。この宝石箱のような短編集を、ぜひ、お手元に!
担当編集者からのコメント
本書には1925年の創刊から1950年代までのあいだに発表された名作が収録されています。かなりの昔だと思われるかもしれませんが、これが全く古びない素晴らしいものばかり。笑えるものから、しみじみするもの、とんでもなく切ないものまで、忘れがたい作品がどなたにも必ず見つかるはずです。第2巻『ベスト・ストーリーズⅡ 蛇の靴』と、『ベスト・ストーリーズⅢ カボチャ頭』もあわせてぜひお手に取っていただけると嬉しいです。
早川書房 永野渓子さん
編者 若島正さんからのコメント
この短篇アンソロジーの原型になっているのは、やはり早川書房から1969年に出た、『ニューヨーカー短篇集』全3巻です。あの当時、「ニューヨーカー」を中心にした海外小説を紹介するブームがあり、一読者としては良き時代だったなあと懐かしく思い出します。それをアップ・ツー・デートなものに更新しながら再現しようとしたのが今回のアンソロジーで、作者および作品の選定から、訳者の指名まで、編者として最大限の贅沢をしたつもりです。