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reco本リレー【19】木村浩美さんのreco本
『柳宗民の雑草ノオト』
「次はなんの本を読もうかな」と思ったら、ぜひreco本を手に取ってみてください。
バトンが誰に渡るのかも、お楽しみに!
木村浩美さんのreco本
木村浩美さんのプロフィール:
文芸翻訳家。メアリー・スチュアート『霧の島のかがり火』、レイチェル・ベイリー『大富豪の秘密の相続人』、アンナ・デパロー『伯爵のかりそめの妻』、イーデン・フィルポッツ『守銭奴の遺産』、ローレン・ビュークス『シャイニング・ガール』、ローズマリ・エレン・グィリー『悪魔と悪魔学の事典』(共訳)、ドナルド・E・ウェストレイク『忙しい死体』、ミリアム・ヴァン・スコット『天国と地獄の事典』(共訳)など訳書多数。
この作品の読みどころ
「空き地や路傍でよく見かける雑草は、花壇や畑では厄介者。けれども、その可憐な花には四季の風情を感じさせる愛らしさが漂っている。練達の園芸家が庭の片すみで植物を見つめ、そのたくましさと生命の神秘に惜しみない賞賛を捧げる。」
この夏はスコットランドに飛び、ヒースを眺めていた(もちろん脳内旅行)。実際の目には何が映っているかといえば、庭の恐ろしいほど伸びた雑草である。思いたって、ずっと手元にあった本書を読み始め、夢中になった。もともと草むしりをしていて、小さな花がかわいい、もったいないなあと思ってしまうほうだった。本書の力で、どの草も魅力が増したように思える。
本書には四季それぞれに咲く野の花が紹介されている。たとえば、春はシロツメクサ。いわゆるクローバー。野原で四つ葉を探したり、花輪を作って遊んだりした懐かしい草である。「白爪草」(花びらの形からして)だと思ったら、オランダ船が乾燥させた草を詰め物に使っていた「詰め草」だという。また、ハコベはフランスでも小鳥の餌になり、ドクダミは臭いけれど薬草にもなる。まさに「どんな草でも、どこかに美しさがあり、役立つ面がある」といえそうだ。
「練達の園芸家」は短大時代の恩師である。いつも穏やかで、植物への愛にあふれ、指の爪に土が詰まっていたのが忘れられない。