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reco本リレー【7】東野さやかさんのreco本
『ガンメタル・ゴースト』
「次はなんの本を読もうかな」と思ったら、ぜひreco本を手に取ってみてください。
バトンが誰に渡るのかも、お楽しみに!
東野さやかさんのreco本
東野さやかさんのプロフィール:
文芸翻訳家。上智大学外国語学部卒。ジョン ハート『終わりなき道』『アイアン・ハウス』『ラスト・チャイルド』、ローラ チャイルズ『プラム・ティーは偽りの乾杯』『幸せケーキは事件の火種』、ブレイク クラウチ『ラスト・タウン―神の怒り―』『ウェイワード―背反者たち―』、ニック・ピゾラット『逃亡のガルヴェストン』、ウィリアム・ランデイ『ジェイコブを守るため』訳書多数。
この作品の読みどころ
子ども時代はジャンルに関係なく、物語ならなんでも読んでいたはずなのに、いつのころからか、海外ミステリー中心の読書生活になっていたわたし。でも、今回ご紹介するガレス・L・パウエルの『ガンメタル・ゴースト』はSFです。しかも歴史改変もの。えー、むずかしいんじゃないの、なんて声が聞こえてきそうですが、いえいえ、これがもう、痛快な冒険活劇で本当におもしろいんですってば。
舞台となるのは近未来。といっても、いまの延長線上にある近未来ではなく、1959年にイギリスとフランスが統一されて連合王国となってから100年がたったという2059年です。主人公は猿。猿といったって、そんじょそこらの猿ではなく碧眼、眼帯、二挺拳銃がトレードマークのハードボイルドなキャラで、しかも不死身のパイロットという設定。でも不死身なのにはわけがあって……おっと、ここから先は言わずにおいたほうがいいですね。
とにかくその猿、“高射砲(アクアク)”マカークが連合王国の皇太子メロヴィクや、事故で脳の大半をジェルウェアという人工脳に置き換えた元ジャーナリストのヴィクトリアらとともに、巨大な陰謀を阻止すべく大活躍を見せるのです。
訳者あとがきに「うまいもの全部載せのパフェみたいな作品」という表現があるけれど、まさにそれ。楽しみどころが満載で、おもしろいシーンをあげていったらきりがありません。ストーリーがシンプルな分だけ、ディテールをたっぷり楽しめます。それに、これは声を大にして言いたいのですが、女性の登場人物がみんな魅力的でかっこいいんですよ。
マカークが活躍するシリーズはこのあと2作出ているとか。続編の翻訳も待っています。
担当編集者からのコメント
英国SF協会賞受賞&日本の星雲賞参考候補と、どちらもファン投票の賞で高く支持されたのも納得の、ドライブ感あふれるエンタテインメント。原書を読んで版権獲得を即決した思い出があり、個人的にも大好きな作品です。未訳のシリーズ第2部・第3部では集合精神や並行世界などなど、ぶっ飛んだアイデアをさらに上乗せ。読者の皆様にさらなる支持をいただければ、ぜひとも続編を日本に紹介したいと思っています。
東京創元社 石亀航さん
翻訳者 三角和代さんからのコメント
キャラが立っているからそれぞれの登場人物の口調を考えるのも楽しく、訳していてとても愉快だった本です。場面の転換が早くてそれほど分厚くもありませんので、手に取り、さくっと読んで、ああおもしろかった――そんな読書体験を提供できるのではないかと思います。SF好きもミステリー好きも、とにかくわくわくする物語が読みたい人も、ぜひどうぞ。下敷きとなった短篇も所収のお得な1冊です!