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reco本リレー【24】赤塚きょう子さんのreco本
『サイモンvs人類平等化計画』
「次はなんの本を読もうかな」と思ったら、ぜひreco本を手に取ってみてください。
バトンが誰に渡るのかも、お楽しみに!
赤塚きょう子さんのreco本
赤塚きょう子さんのプロフィール:
イタリア語翻訳家。訳書にフェーベ・シッラーニ/ジュリア・マレルバ『世界食べものマップ』(共訳)、スーザン・クークリン『イクバルと仲間たち』(共訳)、サンディ・マカーイ『リサイクル』、イアン・グラハム『太陽系探検』などがある。
この作品の読みどころ
ここ数年、LGBTQの登場人物が出てくる本が増えてきたように思う。『サイモンvs人類平等化計画』の主人公サイモンもゲイだが、別に芸術家肌ではなく、どこにでもいそうな普通の高校生だ。友だちも多く、家族仲もいい。ネットで知り合ったブルーに恋していて、ブルーのひとことにときめいたり、ひょっとして向こうも自分のことを? なんて舞い上がったりする。
サイモンがブルーに宛てたメールを、うっかりミスで、同級生のマーティンに見られてしまうところから物語は始まる。よりによって、ムカつくやつに自分がゲイであることが知られてしまうなんて! あわてふためくサイモンは、半ば脅迫されて、男子に人気のあるアビーとマーティンの仲を取り持つはめになる。
ブルーのことは同じ高校の3年生であることしかわからず、サイモンはメールに書かれていることを手がかりに、ブルーを見つけようと試みる。その一方で、家族にいつカミングアウトするかで悩んでいる。なりゆきでマーティンと一緒に過ごす時間が増えていくうちに、けっこういいやつかもしれないと思うようになったりもする。
サイモンがゲイであることは、途中からどうでもよくなってくる。だって、サイモンを構成する要素のひとつにすぎないから。隠しているつもりはないけれど人には話さないことなんて、だれにだってあるはず。それにしても、ゲイというだけで、サイモンにゲイの知り合いを紹介しようとする人たちは何なのだろう? 謎だ。
担当編集者からのコメント
恋をしている時の高揚感や葛藤がまっすぐに描かれている本です。そのことがまず素敵です。プラスして言えるのは、男の子が男の子を好きになる気持ちを、しごく当たり前のこととして描いている。その書き方に救われるものがあると思いました。「みんな全員、カミングアウトするべきだと思わない?(中略)だれにとっても、同じくらい気まずくなくちゃ」そんなサイモンの率直な言葉には、時代が前に進んでいることを感じさせてくれる、さわやかな力があります。
岩波書店 須藤建さん
翻訳者 三辺律子さんからのコメント
「出てくる人がみんないいヤツなのがいい」これは嬉しかった感想のひとつ。そうなのです、ちょっとナイーブな愛されキャラのサイモンも、ややこじらせてる親友のリアも、はつらつとしたアビーも、理解のある親(アピール)のお母さんも、「あーあ」って感じのお父さんも。
そして、感想で一番多く見かけた引用が、「ゲイだけじゃなくて、人間はみんな、平等にカミングアウトしろって話だから」というサイモンのセリフ。みんな、サイモンのことをわかってくれてるんだなって、胸が熱くなっています。