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特許翻訳とは?書類の例や必要なスキル、目指し方を解説!
本記事では特許翻訳について解説します。翻訳対象となる書類の例や特許翻訳に必要なスキル、特許翻訳者の目指し方についてまとめました。
本記事を読めば、特許翻訳の概要を理解でき、特許翻訳者になる方法も分かります。特許翻訳に興味がある方はぜひ参考にしてください。
特許翻訳とは?
特許翻訳とは、特許関連の書類を翻訳することを指します。特許を日本だけでなく海外でも取得したい場合、申請に必要な書類を翻訳して提出する必要があります。特許を取るには厳格な審査に合格する必要があるため、正しい翻訳が求められます。そのため、特許の出願人は特許翻訳のプロに仕事を依頼する場合が多いです。
日本で取った特許は海外では適用されません。そのため、海外で模倣品の作成などを防ぎたい場合は、海外でも特許を取る必要があります。昨今はグローバル化の流れがあり、海外でも特許を取りたい企業は多く、特許翻訳の需要も高まっています。
そもそも特許とは?特許を取る流れ
特許翻訳について解説する前に、特許の全体像について解説します。特許とは発明を保護する権利です。特許を取得すれば、発明した商品やサービスの生産、使用、販売などを独占できます。第三者が模倣品を販売するなど権利を侵害した場合、差し止めや損害賠償を請求することが可能です。権利期間は出願から20年となっています。
特許を取るには特許庁に書類一式を提出する必要があります。提出してもすぐに取れるわけではなく、様式のチェック(方式審査)と特許審査官による審査(実体審査)が行われ、審査に合格した場合のみ、特許査定を受けられます。
審査を通過できない場合は、拒絶理由通知が送られてきます。この通知には、審査に落ちた理由が書かれており、出願人は通知書に反論するための意見書や補正書を提出することで、特許査定を受けられる可能性があります。
翻訳が必要な特許申請書類の例
特許を取得するにあたり翻訳が必要な書類の代表例として次の3つが挙げられます。
- 特許明細書
- 拒絶理由通知書
- 拒絶理由通知書に対する意見書
これらの書類を正確に翻訳することは、審査の合格有無にも関わってきます。ひとつひとつの書類の特徴について詳しく解説しましょう。
特許明細書
特許明細書は特許を取るために特許庁に提出する書類の1つです。提出書類の中でも、発明の内容を詳細に記載することから、審査に大きく関わります。特許を海外で取るには、その国の言語に翻訳された明細書が必要です。
特許明細書は特許庁が指定する様式に基づいて作成する必要があります。様式は国や地域によって異なります。発明の目的や効果などを具体的に記載し、明細書を読めば他者でも発明を実施できるレベルに仕上げるのが基本です。
拒絶理由通知書
拒絶理由通知書は、審査に不合格になった場合に送られてくる書類です。特許申請の場合、一度審査に落ちても、通知書に書かれた落ちた理由を理解し、意見書や補正書を提出することで落ちた理由を解消すれば、合格できる可能性があります。
海外で特許を取る場合、拒絶理由通知書は当然外国語で送られてきます。出願人が外国語を理解できるとは限らないので、翻訳者が翻訳文を作成する必要があります。
翻訳者は、通知書の内容を正確に翻訳する必要があります。誤訳があると、落ちた理由を解消できる意見書を作成することができず、不合格になる恐れがあります。
拒絶理由通知書に対する意見書
拒絶理由通知書に反論するための意見書や補正書も翻訳して提出する必要があります。意見書も明細書同様に、様式に基づいて作成しないといけません。
拒絶理由通知書に対する意見書を書く場合、通知書の内容を深く理解し、論理的に反論しないといけません。反論の具体的根拠を示す必要もあります。
意見書に関しても、出願人の意図が正しく伝わるように翻訳する必要があります。
特許翻訳に必要なスキル
特許翻訳に必要なスキルは大きく次の3つに分けられます。
- 読解力・文章作成力
- 特許取得の流れや、書類に関する知識
- 原文に関する専門知識
他の分野と共通するスキルもありますが、特許翻訳ならではの必要なスキルもあるので注意が必要です。ひとつひとつのスキルについて詳しく解説していきます。
読解力・文章作成力
特許翻訳者には高度な読解力と文章作成力が求められます。翻訳者の読解力、文章作成力が、特許申請が通るか通らないかを左右する可能性もあります。
特許明細書などを書く際は、論理が飛躍することがないように書く必要があります。特に拒絶理由通知書に対する意見書を書く場合、拒絶理由通知書をよく読んで、論点がズレることのないように反論しないといけません。
しかし、出願人も特許申請に慣れているとは限らないため、文章が読みにくかったり、言葉の使い方が間違っていたりする場合もあります。その場合でも、翻訳家が出願人の意図をしっかり汲み取り、自己解釈を加えずに忠実に翻訳する必要があります。
特許翻訳者には、単に原文訳す以上のスキルが求められます。
特許取得の流れや書類に関する知識
翻訳者は、特許出願から審査、特許権取得までの流れを理解し、その間で発生する書類の知識も求められます。
特許明細書などの書類は様式が定められていますが、様式は国や地域によって異なります。様式を理解せずに翻訳者が様式から外れた翻訳文を作成した場合、審査に落ちる可能性があります。
原文に関する専門知識
特許翻訳者には、原文に関する専門知識が求められます。
他の分野にも言えることですが、特許においても専門知識が全くないと技術内容や出願人の意図を正しく汲み取ることができず、誤訳につながってしまうためです。一方で、知識にばかり頼ってしまうと思い込みで誤訳することもあるため、原文に忠実で、かつ意図を適切に反映した翻訳が必要です。
化学、機械、電気・電子、医薬、ITなどさまざまな分野で技術開発が行われ、新たな発明に対する特許が出願されています。どれかひとつ自分の得意分野を持っておくと、調べものを効率よく行えるでしょう。
特許翻訳者になるには?
特許翻訳者の仕事に興味があるものの、目指し方が分からないという方も多いかと思います。特許翻訳者になるには特許分野を扱う翻訳会社に就職するのが一般的です。また、大手の特許事務所で翻訳者を採用している場合もあります。
翻訳会社などで実績を積んだ後は、将来的にフリーランスの翻訳者として独立する方も多いです。フリーランスになると、翻訳会社などと個人で契約して仕事を獲得します。
いずれにしても翻訳家としての高度なスキルが求められます。特許翻訳は求められる専門知識が多いうえに、誤訳が許されない分野でもあるため、目指すのは容易ではありません。
しかし、自分が作成した書類によって出願人が特許を取ることができた場合には達成感を強く抱くことができ、やりがいも大きい仕事であると言えます。
特許翻訳者に向いている人は?
特許翻訳者に向いている人は、最先端の技術やビジネスに深い関心を持っている人です。日頃からニュースや業界誌などで最新情報をキャッチしていないと、特許関連の書類の翻訳を行うことが難しくなります。
小説やエッセイといった分野の翻訳のように、読み手を惹き付けるための表現力は求められず、それよりも出願人の意図を正確に伝えるための翻訳が求められます。
また、特許の審査に通過するために、細かいところまで気を配った翻訳ができる方も向いています。正確な翻訳が要求されるため、集中力の高さなども必要になるでしょう。
特許翻訳者になるのに資格は必要?
特許翻訳者になるのに資格は基本必要ありません。ただし「知的財産翻訳検定試験」などの資格を取得すれば、一定レベルのスキルを証明することの手助けになります。特許翻訳者を目指すなら、取得するのもおすすめです。
ただし、資格を取得しても仕事を獲得できるとは限りません。仕事を獲得するには、翻訳会社のトライアル試験に合格しないといけない場合も多いです。資格以上に、翻訳家としてのスキルや実績が求められる分野であると言えます。
特許翻訳者の仕事に将来性はある?
特許翻訳者の仕事は将来性が十分にあると言えます。特許制度の歴史はかなり古く、海外で特許を出願するための翻訳需要が急に減少する可能性は低いです。
特に昨今はグローバル展開を進める企業が増えています。海外でも商品・サービスを販売するためには、知的財産を活用して競合との競争を優位にすることが重要です。
また、翻訳者の仕事が今後AIに奪われる問題を心配する方もいるかもしれません。実際、特許翻訳をはじめ翻訳業務の一部はAIによる自動化が行われています。しかし、AIが参入するからといって、翻訳者の仕事がすべてなくなるわけではありません。
特に専門性の高い特許翻訳の場合、AIのみで質の高い翻訳文を作成するには限界があり、AI自動翻訳にかけたあと翻訳者によって編集や修正を行うケースがほとんどです。
今後はAIを上手く活用できる翻訳者の需要が高まることが予想されます。AIによって翻訳作業を効率化し、自分は翻訳文の質を高める作業に注力するといったことが重要です。
特許翻訳者になるためのスキルを習得する方法
特許翻訳者には幅広いスキルが求められますが、まずは語学力・文章力といった基礎スキルを磨く必要があります。基礎スキルを磨く方法として次の2種類をおすすめします。
- 翻訳学校に通う
- 通信講座を活用する
独学よりも翻訳学校や通信講座を利用した方が、効率的にスキルを得られます。ひとつひとつのスキルを習得する方法について詳しく解説していきましょう。
翻訳学校に通う
翻訳学校は翻訳者を目指す方のための学校です。翻訳学校によっては、特許翻訳の専門コースや授業を設けている場合もあり、特許明細書の書き方やルール、特許出願の流れなどについて詳しく教えてくれます。
翻訳学校は独学よりも習得スピードを早められるのがメリットです。翻訳のプロから直接指導やフィードバックが受けられます。分からない箇所もその場ですぐに質問可能です。
また、教室には一緒に勉強する受講生がいるため、モチベーションを高めることができたり、意見交換を行ったりすることができます。
今はオンラインクラスを設けている学校が多いため、近くに学校がなくても利用できます。
関連記事:苦手だった英語を克服し会社員からフリーランス特許翻訳者に転身
通信講座を活用する
通信講座は自宅に届いた学習教材を元に、自宅で学習を進める方法です。授業に参加できない場合、通信講座の活用も検討してみましょう。
通信講座は自分のペースで空いた時間に学習できるのがメリットです。プロの先生が添削を行ってくれるため、完全な独学よりも上達スピードを速めることができます。
ただし、自宅で学習する必要があるため、自己管理が必要になってきます。学習スケジュールを自分で立てられる方に、通信講座はおすすめです。
まとめ
本記事では特許翻訳について解説しました。特許翻訳の対象になる書類の種類や必要なスキルなどがお分かりいただけたかと思います。
特許翻訳に必要なスキルは多岐に渡ります。基礎的な読解力や翻訳力に加えて、各国の書類の記載ルールに関する知識や原文に関する専門知識も身につけないといけません。
とはいえ、昨今企業のグローバル化が進んでおり特許翻訳の重要性が高まっています。また、最新技術やビジネスに関われるという意味でも、やりがいのある仕事です。特許翻訳の分野に興味があるなら、目指してみることをおすすめします。
翻訳スキルを効率的に身につけたいなら、独学より翻訳学校や通信講座の活用がおすすめです。プロの先生から特許翻訳のコツやルールを直接学べるので、上達スピードが速いです。
翻訳家を目指すならフェロー・アカデミーへ!
仕事に繋がる翻訳スキルを学ぶなら、翻訳学校がおすすめです。
翻訳学校であれば専門知識と業界経験を持った講師による指導を受けることができ、学習中の疑問点をすぐに解決できます。
また最適化されたカリキュラムのため無駄がなく、効率的に学ぶことが可能です。
「フェロー・アカデミー」ではライフスタイルやレベルに合わせて講座を選ぶことができ、必要な知識やスキルの習得、仕事獲得までサポートが受けられます。
学校パンフレット(電子ブック)をPDFで閲覧できますので、最速で翻訳家を目指す方はぜひお気軽に資料請求ください。コース別の説明会、プラン選びのための学習カウンセリングも実施しています。
この記事の監修
その後、翻訳者を志し退職、フェローアカデミーの「ベーシック3コース」を修了し、翻訳者として5年間活動した後、翻訳者ネットワーク「アメリア」立ち上げに参画、理事長/代表取締役に就任。