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出版翻訳とは?必要なスキルや目指す方法、産業翻訳・映像翻訳との違いを解説!

「出版翻訳分野で働くことに憧れているけど、何から始めれば良いのか分からない」
「出版翻訳と産業翻訳・映像翻訳の違いが分からない。どの分野が良いの?」
「自分の実力で出版翻訳の仕事ができるの?どんなスキルが必要?」

このような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

本記事では 出版翻訳とは何か、について解説 します。


出版翻訳に必要な5つのスキルや、出版翻訳が行われる流れ、目指す方法などについてまとめました。
本記事を読むことで出版翻訳とは何かが分かり、自分は出版翻訳分野を目指すべきなのか、それとも他の翻訳分野のほうが良いのか、判断しやすくなるでしょう。

出版翻訳に興味がある方はぜひ参考にしてください。

 

出版翻訳とは?

出版翻訳とは 翻訳の1分野であり、海外の書籍を翻訳する仕事 」を指します。

たとえば、外国の小説やビジネス本が日本語に翻訳され、日本で販売されることが多くあります。
翻訳の中でも身近な分野であり、かつ翻訳者の名前が書籍に掲載されるということもあって、憧れる人も多いのではないでしょうか?

出版翻訳家として働く人の多くはフリーランスとして活動しており、「書籍の翻訳をしてほしい」という依頼を出版社から受けています。
翻訳者は出版社と業務委託契約を結び、仕事を受注します。
翻訳した文章は編集者の手によって編集・校正されてから出版されます。

出版翻訳は他分野に比べて、幅広い知識が求められる傾向が強いです。
また、小説やエッセイを翻訳する場合、翻訳の正確さだけでなく、表現の面白さや魅力も求められることになります。

産業翻訳(実務翻訳)との違い

産業翻訳(実務翻訳)とは、一般的には企業や研究所などで扱われる文書の翻訳を行う仕事を指します。翻訳分野の中でも産業翻訳は大きな割合をしめています。というのも、産業翻訳で扱う文書は多岐にわたるためです。

  • システムなどの仕様書
  • 会社のプレゼン資料
  • 会社のカタログやパンフレット
  • 研究者の論文
  • 特許明細書

あくまで例ですが、こういった文書を翻訳することになります。

産業翻訳は他の分野よりも専門性が求められることがあります。たとえば金融翻訳の場合、金融の基礎知識はもちろん、ここ数年の金融業界の動向なども知らないといけないため、常に知識をアップデートしなくてはいけません。

出版翻訳の場合、さまざまな分野を担当するオールラウンダーな翻訳家も多いですが、産業翻訳の場合は、何らかの分野に特化した翻訳家が多いです。

映像翻訳との違い

映像翻訳とは、文章ではなく映像媒体を翻訳する仕事を指します。たとえば、映画やテレビ番組、企業のPR動画といったものが該当します。映像翻訳でもっとも身近なものと言えば、海外の映画の字幕作成や吹き替え版の原稿作成が挙げられるでしょう。

映像作品の魅力を伝えられる優れた翻訳者の手によって、海外の映画が日本でもヒットすることは多くあります。そのため、映像翻訳も人気が高いジャンルです。

ただし、映像翻訳には映像翻訳ならではの難しさがあります。たとえば、映画の字幕を作る際は、視聴者が瞬時に理解できるよう平易な語彙を使用しなくてはいけませんし、文字数にも制限があります。
また、吹き替え版の原稿を作る際は、映像の動きと合わせなくてはいけません。このような制約の中で、優れた翻訳を行う必要があります。

出版翻訳には大きく2つのジャンルがある

出版翻訳には大きく2つのジャンルがあることを知っておきましょう。

  • フィクション
  • ノンフィクション

出版翻訳には大きくこの2つのジャンルがあります。
「フィクション」「ノンフィクション」とでは、求められるスキルや向いている人のタイプが異なります。
どちらのジャンルを中心に行っていきたいかを、まずイメージすることが大切です。

それぞれのジャンルの詳細について詳しく解説していきます。

フィクション

フィクションとは 創作された物語のことであり “主に小説や漫画” を指します。

有名なものですと、『ハリーポッター』シリーズ『赤毛のアン』といったものがあります。
これらの作品は日本語にも翻訳され、多くのファンを生み出しました。
海外の文学作品を別の言語に移し替えた小説は、翻訳文学と呼ばれることが多いです。

翻訳文学にはファンタジーやSF、ミステリーなどさまざまなジャンルがあります。
特に『ハリーポッター』などの児童文学は人気が高く、多くの人に名前が知られている翻訳者の方もいます。

小説などを翻訳する場合、語学力だけでなく表現力や発想力も求められます。
作品の魅力を削ぎ落とさず、読者を惹きつけられるような翻訳を行う必要があります。

ノンフィクション

ノンフィクションとは 創作されていない読物のことであり “ビジネス本や実用書、歴史書や自伝など” を指します。

有名なものですとロングセラーの『夜と霧』、記憶に新しい『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 』といったものがあります。
日本でベストセラーになる作品は多く、ノンフィクションの翻訳の仕事を行いたい方も多いでしょう。

ビジネス本などを翻訳する場合、その分野の知識が求められます。
また、書籍によって調べるべき情報の量は異なるため、翻訳にどの程度の時間がかかるのか正しく見積もる能力も必要です。

翻訳書が販売される流れ

続いて、出版社にて海外の書籍が翻訳され、日本で出版されるまでの流れを解説します。
出版社によって具体的な流れは異なりますが、大雑把に次のような流れで販売されることが多いです。

 ①書籍選択
 ②要約作成
 ③出版決定
 ④翻訳
 ⑤校正
 ⑥印刷・販売

翻訳書が販売される流れを知っておくことで、出版翻訳の仕事のイメージも湧いてくるでしょう。
翻訳書が販売される各フローについて、1つ1つ詳しく解説していきます。

①書籍選択

まず出版社が、日本で出版すべき海外の本を探します。
本の売上や読者層などさまざまなデータを集め、日本でもヒットすると思われる作品を分析します。
また、ブックフェアなどに足を運び、世界各国の出版社から情報を集めることもあります。

②要約作成

次に出版社が、出版候補となる作品を決定し、その要約の作成を翻訳者に依頼します。
要約の作成はリーディングとも呼ばれています。
リーディングでは、書籍の概要や所感を資料として日本語でまとめなくてはいけません。

リーディング資料は、出版するかどうかの最終判断をするのに使う重要なものです。
なお、リーディング作業のみを翻訳者が請け負うこともあります。

③出版決定

次に出版社が、リーディングや売上データなどの資料をもとに、編集者や営業担当者などと打ち合わせを行い、出版するかどうかの最終決定を行います。

出版すると決まったら、版権を取得する必要があります。版権取得とは、出版社が著作権者から本を管理する権利をもらうことです。原書の著者と出版社が契約を結びます。

④翻訳

次に出版社が、外部の翻訳者に翻訳を依頼します。翻訳者は作業内容を確認し、いつまでに翻訳を完了させられるかの作業見積もりと希望報酬額を提示します。
双方の合意が取れれば契約成立となり、翻訳者は作業を開始します。

出版翻訳も他分野と同様、納期がシビアな場合があります。そのため翻訳者はスケジュールをしっかり立て、無理がないように作業を進めていく必要があります。

⑤校正

翻訳が完了したら、原稿を編集者に提出します。編集者から修正を求められた場合、ただちに対応する必要があります。
修正が終わったら、後は編集者の方で校正作業を行います。不要な箇所を削除したり、翻訳に間違いや分かりにくい箇所がないか確認します。

⑥印刷・販売

校正が完了したら、印刷が開始されます。印刷された本は書店などに並ぶことになります。
また電子ブックとして販売されるケースもあります。

以上が、翻訳書が販売されるまでの流れとなります。

出版翻訳のプロになるのに必要な5つのスキル

続いて、出版翻訳のプロになるのに必要なスキルについて解説します。
出版翻訳の道に進みたいなら、次の5つのスキルを鍛えていくと良いでしょう。

 ①語学スキル
 ②文章力・表現力
 ③情報収集能力
 ④読解力
 ⑤体力・集中力

産業翻訳や映像翻訳と求められる基本的なスキルに大きな違いはありませんが、出版翻訳の特徴をふまえ、必要なスキルについて詳しく解説していきます。

①語学スキル

出版翻訳分野で稼いでいくなら、辞書なしで原書を読みこなせるくらいの語学力が欲しいところです。
語学力に関しては、案件を受注できるようになってからも継続的に磨く必要があるでしょう。

特に出版翻訳はフリーランスとして働く方が多いです。
競争率が激しい分野でもあるため、他のフリーランスに負けないレベルの語学力があると良いでしょう。

②文章力・表現力

特に小説やエッセイを翻訳する場合、文章力・表現力が肝になります。
単に日本語に移し替えるだけでなく、しっかり読者が感情移入できるような文章を構成しないといけません。ここが産業翻訳などとは異なる点です。

また、ジャンルや読者層によって文体を変えられるスキルも必要でしょう。
たとえば児童書なら小学生でも理解しやすい言葉を使う必要がありますし、恋愛小説ならロマンチックな表現を意識しなくてはいけないことがあるでしょう。

③情報収集能力

出版翻訳を行う場合、情報収集能力も求められます。1つの小説を翻訳する際には、さまざまな情報を知っておかないといけません。
たとえば、小説の舞台となっている国の文化や風習が分からないと、正確な翻訳ができない可能性があります。

翻訳者は決められた納期の中で、素早く情報収集を行う必要があります。

④読解力

出版翻訳を行う際には、原書を正しく読み込める読解力も必要です。
読解力がないとそもそも正しい翻訳ができません。当たり前のことと思われがちですが、小説などの場合はそう簡単なことでもないのです。

小説の場合、あえて矛盾した言い回しを用いたり、直接的な表現を避けたりすることが多いです。
そのため、作者の意図を正しく汲み取れないと誤訳に繋がってしまいます。

⑤体力・集中力

最後に、出版翻訳を行う際には体力・集中力が求められます。
出版翻訳は納期がシビアなこともあるため、納期に間に合わせられるだけの翻訳スピードが必要です。

また、翻訳者はフリーランスとして活動することが多く、収入を上げるには翻訳スピートを上げる必要があります。
翻訳スピードを上げより多くの案件に参画できれば、その分収入を増やすことが可能です。

出版翻訳のプロになるには?

出版翻訳のプロを目指す場合、翻訳学校に通うのが一般的です。

翻訳学校では翻訳に必要な語学力や文章力、表現力を一通り身につけることができます。
講師であるプロの翻訳家に自分の文章を添削してもらえるため、独学よりも上達は早いことが予想されますし、途中で挫折する心配も少ないと言えます。

また、翻訳学校の先生や関係者から、仕事の誘いが来る可能性もあります。
そのようなチャンスが来れば積極的に受けるようにしたいです。
出版翻訳の分野を目指すライバルは多いですから、やってきたチャンスは逃さないようにしましょう。

その他、オーディションやコンテストに応募したり、出版社に直接企画を持ち込んだりしてデビューを果たす人もいます。
いずれにせよ、積極的な行動が必要となります。

最初のうちは、リーディング(書籍の要約作成)単体の仕事を任されることも多いです。
リーディングはあまり単価が高くない場合が多いですが、翻訳の実践スキルを身につけられますし、何より実績を作ることが可能です。

仕事を請けた経験が多い人ほど、出版社は安心して仕事を任せることができます。
そのため、小さい仕事でも良いので、まずは多くの実績を作ることが大切です。

まとめ

本記事では出版翻訳について解説しました。
出版翻訳で求められるスキルや出版翻訳分野に参入する方法などが、お分かりいただけたかと思います。

出版翻訳分野に参入するには、語学力はもちろん、表現力など幅広いスキルを鍛える必要があります。
人気の高いジャンルでもあるため、参入するのは決して容易ではありません。

ポイントは「 チャンスが来たらとりあえず飛び込んでみる 」ことです。

翻訳学校の先生や取引先から仕事の誘いがあったら、積極的に受けてみましょう。
最初はリーディングの仕事や簡単な翻訳業務がメインかもしれませんが、そういった仕事で実績を地道に作れば、いずれ出版社から本格的な出版翻訳の依頼を受けることができるかもしれません。

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この記事の監修

フェローアカデミー理事長 室田陽子
フェローアカデミー理事長室田 陽子
学習院女子短期大学卒業後、株式会社サンリオに入社。4年間グリーティングカードの企画に携わる。
その後、翻訳者を志し退職、フェローアカデミーの「ベーシック3コース」を修了し、翻訳者として5年間活動した後、翻訳者ネットワーク「アメリア」立ち上げに参画、理事長/代表取締役に就任。

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