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金融翻訳とは?求められるスキルや学習方法、翻訳のポイントについて解説!

「金融翻訳関連の仕事に関わりたいが、何を勉強すれば良いの?」
「そもそも金融翻訳ってどういった文書を翻訳しているの?」
このような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
本記事では金融翻訳とは何か、について解説します。金融翻訳を行う4つのポイントや、必要なスキル、学習方法などについてまとめました。
本記事を読むことで金融翻訳分野に関わるために、まず何をすれば良いかが分かります。金融翻訳に興味がある方はぜひ参考にしてください。
INDEX
金融翻訳とは?
金融翻訳とは文字通り、金融業界に関連する翻訳を指します。金融業界に属する会社には次のようなものがあります。
●銀行
●証券会社
●保険会社
●クレジットカード会社
金融翻訳では、このような会社で扱われる資料の翻訳を担当します。
金融翻訳は一見ニッチな分野に感じますが、投資家をはじめ他国の経済情勢などの情報をいち早く知りたい方は多くいるため、むしろ需要が高い分野と言えます。そのため、金融翻訳に特化した企業も多く存在します。
金融翻訳で翻訳対象となる文書

金融翻訳で翻訳対象となる文章には、次のようなものがあります。
●決算報告書
●運用報告書
●各種契約書
●金融商品説明書
●証券分析書
●市場調査書
和英・英和翻訳が中心となっています。金融ビジネスに関連する多くの文書が翻訳対象となります。これらの翻訳を行うには、当然金融に関する専門知識が必要です。また、金融業界は動向の移り変わりが激しいため、不備なく翻訳するためには金融業界に関する知識を随時アップデートしていく必要もあります。
金融翻訳を行う4つのポイントとは?
金融翻訳を行うポイントは次の4つです。
①表記を翻訳地域に合わせる
②経済情勢のリサーチを行う
③金融業界で使う表現を知る
④翻訳地域の法律や文化を知る
金融翻訳は他分野の翻訳よりも難しいと言われています。翻訳を行う際は、これら4つのポイントを意識し、手戻りを減らせるように努めることが重要です。
1つ1つのポイントについて詳しく解説していきます。
①表記を翻訳地域に合わせる
金融翻訳で気をつけるべきことは、表記を翻訳地域に合わせることです。特にお金の表記は国によって微妙に異なることが多いため、きちんと表記方法を把握しておかないと、誤った金額を表記してトラブルになってしまう恐れがあります。
例えば、桁区切りや小数点の区切り方は各国によって異なります。日本やアメリカは桁区切りにカンマ、小数点にピリオドを使いますが、ドイツやイタリアは桁区切りにピリオド、小数点にカンマを使います。
このような違いを正しく理解したうえで、翻訳しないといけません。
②経済情勢のリサーチを行う
金融翻訳では、各国の経済情報のリサーチを入念に行う必要があります。経済状況は大きく変動することもあり、翻訳家は最新情報を仕入れておかないと、間違った解釈で翻訳してしまう可能性もあります。
例えば、為替レートも国の経済情報によって急に変動することがあります。金融翻訳では他分野の翻訳以上に情報のアップデートが重要になってくるでしょう。
③金融業界で使う表現を知る
金融業界では業界特有の表現が使われることも多いため、翻訳者は金融関連の用語知識を備えておく必要があります。用語の意味を間違って理解していると、当然間違った翻訳文を生み出してしまいますし、クライアントからの信頼も失ってしまうでしょう。
たとえば「ポートフォリオ」という言葉があります。「ポートフォリオ」は一般的には、書類を運ぶためのケースを指す場合が多いです。また、IT企業などでは過去の経歴や職歴、制作物をまとめた資料を「ポートフォリオ」と呼ぶ場合も多くあります。
ところが金融業界では「ポートフォリオ」は、金融商品の組み合わせを指す場合がほとんどです。株をどの程度持つかを検討する場合、「ポートフォリオを組む」という言い回しをよく使います。
このように、金融業界と他業界で意味が異なる用語もありますので、翻訳者は用語に関する知識を備えておくことが重要なのです。
④翻訳地域の法律や文化を知る
金融翻訳を正確に行うには、単に金融知識を備えているだけでなく、翻訳地域の法律や文化についても詳しくなければいけません。
国によって異なる法律や規制などをあらかじめ知っていないと、間違った解釈で翻訳してしまう可能性もあります。また、その地域の文化的背景や慣習も考慮しないと、読み手に不快感を与えたり思わぬ誤解が生まれてしまったりする可能性があります。
金融翻訳を行う会社・個人に求められる4つのこと

金融翻訳を行っている企業や個人事業主の方は多くいます。金融翻訳を行う会社・個人には、次の4つが主に求められます。
①金融業界独自のルールや表現方法に対応できる
②品質維持のためのチェックを厳重に行える
③機密データ保持を徹底する
④アフターフォローの素早さ
これら4つを備えているかどうかで、翻訳会社・翻訳者としての評価が決まってきます。1つ1つの求められることについて詳しく解説していきましょう。
①金融業界独自のルールや表現方法に対応できる
金融翻訳を行う際は、金融業界独自のルールや表現方法に対応できる必要があります。先ほど解説したように、金融業界でしか使われていない表現方法も多くあるため、翻訳会社・翻訳者はそれに対応できるようにならなくてはいけません。
対応するためには、金融分野への深い知識が必要です。また、企業によっては経済・投資信託・年金など、各分野ごとに専門家の翻訳者をアサインしている場合も多くあります。
②品質維持のためのチェックを厳重に行える
金融翻訳では、チェック体制が厳重であることが求められます。金融関連の仕事は信頼関係が肝でありミスが許されないイメージが強いですが、翻訳においても例外ではありません。
企業によっては、3重チェック、4重チェックを行っている場合もあります。また、実績のある専門家にネイティブチェック・コンペアチェックを依頼するなどして、品質を確保しようと努める場合も多いです。
さらに、人の目だけでなく、ツール類も駆使してチェックを行います。「読みやすさ」と「正確さ」を両立させるために、翻訳会社はさまざまな仕組みを導入しています。
③機密データ保持を徹底する
金融翻訳の会社は機密データを厳重に管理することが強く求められます。金融関連の情報が外部に漏洩すると、何億もの存在が発生してしまったり、クライアントからの信頼を著しく損ねてしまったりする可能性があります。
そのため金融翻訳会社には、高度な情報セキュリティシステムを導入しウイルスなどの外部からの攻撃から守ったり、事務所のセキュリティ管理を徹底し社内からの漏洩を防いだり、高レベルな情報管理体制が求められるでしょう。
④アフターフォローの素早さ
金融翻訳を請け負う場合、アフターフォローの素早さも求められます。各国の経済情勢などは目まぐるしく変化するため、クライアントからの修正依頼などにはすぐに対応できなくてはいけません。
表記の変更やフォント調整などにも、すぐに対応することが重要です。また、翻訳に関するクライアントからの質問にも、分かりやすく回答できる必要があります。
金融翻訳のプロになるのに必要な3つのスキル
金融翻訳のプロになるには、次の3つのスキルを備えている必要があります。
①金融知識
②語学力・文章力
③情報収集能力
3つのスキルをまんべんなく身につけることで、金融翻訳に関わる道が開かれるでしょう。1つ1つの必要なスキルについて詳しく解説します。
①金融知識
金融翻訳のプロになるなら、金融知識は必要不可欠です。金融関連の知識がないと、どんなに英語力が高くても正確に翻訳することはできません。
金融知識を身につけるには、日頃から金融関連のメディアを読み込むことが大切です。最新の情報を吸収するように努めることが肝心でしょう。加えて、金融関連のコラムなども読み、他国の文化に敏感になっておくことも重要です。
②語学力・文章力
語学力・文章力はやはり翻訳者には欠かせません。金融関連のメディアや専門書を読みつつ、内容を要約するなどして文章力を培っていくことが大切です。語学力・文章力を身につける方法としては、翻訳学校に通う、通信講座を活用するといった方法があります。
③情報収集能力
金融翻訳を行う場合、情報収集能力も重要です。その国の経済動向はリアルタイムで変動しますし、金融業界でのトレンドや投資家の関心ごとなども移り変わっていきます。金融関連に関する興味関心がないと、情報をアップデートしていくのが難しいです。
一般的な金融知識のみならず、クライアントに関する情報も依頼を受ける度に調べなくてはいけません。クライアントのホームページや資料をくまなく調査する必要があります。
金融翻訳のプロになるための3つの学習方法

ここまでお読み頂いた方の中には、「本格的に金融翻訳の道に行きたい」と考えている方もいるかと思います。そこで、金融翻訳のプロになるための学習方法を最後に紹介します。学習方法は大きく分けて次の3つです。
①資格取得を通じて学ぶ
②翻訳学校に通う
③通信講座を活用する
金融分野の翻訳者になるのは、決して簡単ではありません。しっかりスキルを身につけて、戦力になれることを企業にアピールする必要があります。そのためには、自分に合った学習方法を選択し、効率的にスキルを習得していかなくてはいけません。
1つ1つの学習方法について詳しく解説していきます。
①資格取得を通じて学ぶ
金融翻訳に関する資格はありませんが、金融関連の知識を身につけられる資格ならいくつかあります。資格を通じて学ぶことで、偏りなく知識を身につけることが可能です。また、資格があれば転職する際にも、最低限の知識があることを証明しやすくなります。
金融関連の資格でも有名なのが、ファイナンシャルプランナー(FP)です。ファイナンシャルプランナー(FP)は国家試験の1つであり、1級・2級・3級に試験が分かれています。3級から順番に受験することで、段階的に知識を身につけることが可能です。
他には、証券アナリストなど多くの金融資格がありますので、自分が受けやすいものから目指してみると良いでしょう。
②翻訳学校に通う
翻訳学校では翻訳に必要な語学力や文章力などを1から身につけることが可能です。翻訳学校では、分からないところを先生に気軽に質問できますし、添削もしてもらえます。現役翻訳者に添削してもらえるため、独学よりも成長速度は早いことが多いです。
翻訳学校のクラスメイトと情報交換したり、他の人の翻訳内容を見て良いところを吸収したりすることができます。また、勉強仲間がいた方が、学習のモチベーションも保ちやすくなるでしょう。
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③通信講座を活用する
翻訳学校は着実にスキルを身につけられる反面、学費は高めです。学費を払うのが難しいという方は、通信講座を活用する選択肢もあります。
通信講座のメリットは、自分の好きなタイミングで勉強を進められる点です。また添削指導が受けられるケースが多いため、自分の間違いに気がつくことができます。
ただし、通信講座の場合、自分でモチベーション管理やスケジュール管理を行う必要があります。自己管理能力に自信がある人に通信講座はおすすめできます。
金融翻訳者の将来性
金融翻訳者の需要は、グローバル化するビジネス環境や新興市場の拡大により今後も高まると予想されています。金融関連の文書には専門用語も多く、正確で高品質な翻訳が必要とされます。機械翻訳技術が進化し大まかな翻訳は可能になっていますが、適切な用語選び、厳密な表現で翻訳されたものでなければ通用しないため、人間の翻訳者の存在は今後も欠かせません。
特に国際的な投資活動や金融マーケットの変動により、安定した需要が続く見通しです。金融翻訳者は、需要に応えるために金融分野の知識を継続的に深める必要があります。
金融翻訳に関するよくある質問
Q. 金融翻訳のプロになると年収はどれくらいになりますか?
A. 金融業界で活躍する翻訳者の年収は、雇用形態や経験、専門知識の深さによって大きく異なります。厚生労働省のサイトによると、翻訳家の平均年収は697.6万円(※)ですが、金融分野の専門知識を持つ翻訳者の場合、1,000万円以上の高い年収が期待できる可能性があります。
金融業界の翻訳は専門性が高く、需要も安定しているため、スキルと知識を磨くことで高収入を目指すことが可能です。
※就業者に限定したデータ
参考:翻訳者 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
Q. 金融翻訳の求人はどのようにして探せばよいですか?
A. 金融翻訳の求人を探すには、求人サイトや翻訳エージェントを活用するのが効果的です。
なかでもおすすめは、翻訳者ネットワーク「アメリア」です。翻訳に特化した求人情報を年間1,500件以上掲載しており、入会すると求人に応募することができます。募集元の企業は600社以上で、すべて審査制度を通過した企業のため安心して利用ができます。
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まとめ
本記事では金融翻訳について解説しました。金融翻訳分野で求められるスキルや他分野との違いなどがご理解いただけたかと思います。
金融翻訳は他分野の翻訳に比べ、難しいと言われることも多いです。翻訳者は最新の金融知識を備えていなくてはいけませんし、地域ごとの文化や経済情勢も踏まえつつ翻訳作業を進めていかなくてはいけません。
とはいえ、金融翻訳の仕事は今後も求められていくことが予想されます。金融翻訳に関わりたい方は、通信講座や翻訳学校を活用したり資格を通じて独学したりして、まずは翻訳の基礎スキルを固めることが大切です。そのうえで、金融関連のメディアや専門書を読み込み、金融知識を身につけていく必要があります。
最速で翻訳家になるなら翻訳学校がおすすめ
最速で翻訳を学ぶなら、翻訳学校がおすすめです。
翻訳学校であれば専門知識と業界経験を持った講師による指導を受けることができ、学習中の疑問点をすぐに解決できます。
また最適化されたカリキュラムのため無駄がなく、効率的に学ぶことが可能です。
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学校パンフレット(電子ブック)をPDFで閲覧できますので、最速で翻訳家を目指す方はぜひお気軽に資料請求ください。
翻訳の専門校「フェロー・アカデミー」の体験談
「翻訳会社ゼミ」受講を通じて企業から推薦され、IR翻訳の日英チェッカーに
翻訳をはじめ、英日ポストエディットや翻訳支援ツールを使った仕事にも取り組む中で、金融機関での勤務経験を活かせる財務分野の日英翻訳に興味を持ち、フェロー・アカデミーのマスターコースでIR関連の講座を受講することにしました。修了後はIR分野の翻訳業務に携わりつつ、日本財務翻訳株式会社が講師を務められた「翻訳会社ゼミ(財務日英)」を受講しました。
この講座では、財務・IR関連文書における数値の表記法、用語やスタイルの整合、固有名詞の確認などに加え、特有表現についても詳しく学びました。
子育てに翻訳に充実した毎日。次の目標は金融系の出版翻訳です
2015年の1月より、フリーランスの翻訳者として歩み始めました。レギュラー案件として金融記事の英日翻訳を週1回担当し、ほかに社内文書や投資家向け情報などの英日・日英案件を随時受注しています。まだ子どもが小さいので母親業を優先しつつ、空いた時間に集中して翻訳。メリハリのある毎日を送っています。
記事翻訳の仕事は毎週、決められた曜日の夕方に原文が届き、その日の夜10時ごろまでに納品します。分量は仕上がりベースでA4サイズ1枚半ほど。専門家や投資家など金融に詳しい人たち向けの記事なので、用語や背景のリサーチは欠かせません。

その後、翻訳者を志し退職、フェローアカデミーの「ベーシック3コース」を修了し、翻訳者として5年間活動した後、翻訳者ネットワーク「アメリア」立ち上げに参画、理事長/代表取締役に就任。