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アニメ翻訳家に求められるスキルとは?翻訳フローと需要について解説
日本で放送されたアニメを海外に輸出するには、日本語がわからない海外の視聴者のため現地の言語に翻訳する必要があります。
また海外のアニメを日本に輸入するケースも同様、日本の視聴者のために翻訳する必要があります。
アニメの翻訳は、セリフやナレーションを訳すだけではなく、キャラクターの細かな感情の揺れや秘めているメッセージも表現しなくてはなりません。映像の世界観を損なわない、繊細な言葉選びも重要です。
また複雑な文化背景なども視聴者に伝わるようローカライズする必要があるため、日本と海外、両文化の理解が必要です。
今回はアニメの翻訳家が求められるスキルとともに、翻訳するフローについて具体的に解説します。
「アニメの翻訳家になるにはどんなスキルが必要なの?」
「いまから最速でアニメ翻訳家になるにはどうしたらいい?」
「アニメ翻訳家って今後も需要がある?」
など、アニメの翻訳家を目指している方の参考になれば幸いです。
アニメを世界に広めたい!アニメ翻訳家になるには?
好きなアニメを世界に広めたい!もっと色んな人に魅力を知ってほしい!と感じている方も多いのではないでしょうか。
アニメの翻訳とは、アニメのストーリーやキャラクター描写を、他国の言語や文化に落とし込むことです。
特に日本のアニメは海外からの評価も高く、アニメ翻訳家の需要も高くなっています。
ここからは、アニメ翻訳家の需要やほかの翻訳家との違いについて解説します。
アニメ翻訳家の需要
これまでもアニメ翻訳家は重宝されてきましたが、近年、ストリーミングサービスが急激に普及し、海外に輸出されるアニメも増加傾向にあり、多言語対応するために翻訳が必要とされています。
近頃はAI技術の発達により、自動翻訳ツールなどを使用して視聴されているケースもありますが、細かな表現には向いていません。さまざまな国の文化に触れたい、知りたいという視聴者のニーズを満たすためにも、今後さらにアニメ翻訳家の需要は高まるでしょう。
アニメ翻訳家とほかの翻訳家の違い
アニメ翻訳家は、ほかの翻訳家とは少々異なる存在です。
翻訳の対象は大きく分けると3種類あり、アニメは映像翻訳に分類されます。
- 映像翻訳家:アニメやドラマ、映画など、セリフを映像に合わせて字幕や吹き替え用に翻訳する
- 産業(実務)翻訳家:官公庁やビジネスで使用される文書を翻訳する
- 出版(文芸)翻訳家:小説や雑誌など出版物を翻訳する
アニメ翻訳家などの映像翻訳は、実際の発語翻訳だけでなく、映像や効果音など非言語情報も踏まえた翻訳が必要です。
翻訳方法も字幕と吹き替えの2パターンあり、産業翻訳家、出版翻訳家とは異なる独自の翻訳ルールがあります。
アニメ翻訳家の種類
アニメの翻訳家の種類は大きくわけて、次の2種類に分かれます。
①字幕翻訳
②吹替翻訳
吹替翻訳に近い翻訳方法としてボイスオーバーがあります。
しかし、アニメではあまり使用されず、ドキュメンタリー番組や映像と完全に同期させる必要のないイベント映像などで使用されるケースが多いです。
ここからは字幕翻訳と吹替翻訳、それぞれの特徴や制限について、詳しく解説します。
①字幕翻訳
字幕翻訳とは、放送されたオリジナルアニメの音声(セリフやナレーション)ターゲット言語で画面に表示させるための翻訳です。
声優が変わらず、オリジナルの雰囲気も損なわないため、多くの国でアニメが字幕翻訳されています。
しかし、オリジナルの映像に合わせて翻訳した文章を表示させるため、さまざまな制約があります。
制約は翻訳する言語によって異なりますが、日本語に翻訳する場合は下記のような制約があります。
- 1秒当たり4文字程度
- 1行に表示できる最大文字数は13文字前後
- 最大行数は特定の条件を除き2行まで
視聴者が文字を読むことに集中しすぎないよう、字幕翻訳には表示される文字数に制約があります。
場面の切り替えが早いバトルシーンがあるアニメの場合は、より簡潔に翻訳が必要なことも。
字幕として表示される秒数は最大でも6.5秒程度とされていますが、翻訳するアニメの雰囲気によって表示秒数や行数などが異なるため、クライアントに確認する必要があります。
②吹替翻訳
吹替翻訳は、オリジナルアニメの音声を翻訳した音声に吹き替えする方法です。
字幕よりもストーリーや演出に集中しやすいため、子どもも大人もアニメを楽しめます。
吹替翻訳は、オリジナルアニメの動きと翻訳した言語を同期(リップシンク)させる必要があり、字幕翻訳とは違った専門性が求められるでしょう。
文字数や表示される秒数などの制約はありませんが、リップシンクがうまく出来ていないと不自然に感じてしまうため、アニメへの深い理解も重要です。
特にキャラクターの感情や、ため息などセリフ以外のニュアンスを表現するには、翻訳者と声優の連携が要となるでしょう。
アニメを翻訳するフローとは
字幕翻訳なのか、吹替翻訳なのかで多少プロセスは異なりますが、一般的にアニメの翻訳は下記のフローで行われます。
①映像素材とスクリプトを受領する
②翻訳
③校正・校閲
④字幕焼き付け・アフレコ収録
非常にシンプルなフローですが、専門性や理解力がなければアニメの翻訳はできません。
ここで、アニメ翻訳の一般的なフローについて確認していきましょう。
①映像素材とスクリプトを受領する
アニメを翻訳する際、まず映像素材とソース言語のスクリプトを受領するところから始まるケースが多いです。
受領したら映像を視聴し、登場人物の設定や物語の全体像を理解します。
また、字幕翻訳をする場合は、スクリプトの受領後にセリフの長さや字幕の開始・終了時間を設定するスポッティング作業が行われるケースもあります。
②翻訳
翻訳作業では、ただターゲット言語に翻訳するのではなく、視聴者が違和感のないように現地の文化や方言などにローカライズさせるのが重要です。
特に日本のアニメを翻訳する場合、方言や言葉遊びなど、特定の地域では表現が難しいケースも少なくありません。
海外向けに翻訳するにはストーリーやキャラクター性を損なわないよう、表現が難しい部分を補完するスキルも必要になります。
またアニメに限らず、字幕も吹替もそれぞれ、記号の使い方や体裁など原稿作成上の決まりごとがありますので、決まりごとを守りながら訳していくことも必要です。
③校正・校閲
翻訳後は、翻訳が正確か、原作に忠実であるかチェックするために校正・校閲作業が行われます。
翻訳では下記の校正チェック方法が用いられることが多いです。
● プルーフリーディング:誤字脱字、文法の習性、一貫性のある表記への修正
● ネイティブチェック:誤字脱字、自然な文章になっているか、原作への忠実性のチェック
校正・校閲作業は、実際にターゲット言語を母国語としている方に訳文をチェックしてもらうケースが一般的です。
翻訳されたスクリプトに誤字脱字はないか、文法に誤りがないかだけでなく、正確かつ流暢であるかも細かくチェックされます。
④字幕焼き付け・アフレコ収録
翻訳スクリプトが完成したら、実際にアニメ映像に字幕の焼き付け、または声優によるアフレコが行われます。
字幕翻訳の場合は、スポッティングに合わせて翻訳したスクリプトを焼き付けていきます。
吹き替えの場合は、翻訳されたスクリプトをキャラクターの動きに合わせて吹き替える工程(アフレコ)が必要です。
声優はスクリプトに合わせて声をあてていきますが、セリフ調整のために翻訳家へ相談されることもあります。
セリフ以外のため息や舌打ちなど、ちょっとした動作もキャラクターと同期しなければならないため、声優には理解力と表現力が求められるでしょう。
また、収録が終了した後も、映像と収録した音声を合わせる編集作業が必要です。
アニメ翻訳家に必要なスキル
日本のアニメを翻訳する場合、方言などの文化的ニュアンスや習慣が盛り込まれている作品が多く、ターゲット言語に置き換えるには求められるスキルもたくさんあります。
アニメの翻訳で求められるスキルはさまざまですが、特に必要なスキルは次の4つです。
①文化的ニュアンスをローカライズする専門性
②ストーリー性やキャラクター描写を深める表現力
③アニメの世界観に対する理解力
④日本語力(海外から輸入したアニメの翻訳の場合)
好きなアニメの魅力を正しく伝えるためにも、一つずつ確認していきましょう。
①文化的ニュアンスをローカライズする専門性
日本語には大阪弁などたくさんの方言が存在し、同じ意味でもキャラクターによってセリフが異なります。
また「私」や「僕」など一人称も複数あり、英語の一人称である「I」よりも強くキャラクターの印象が分かれます。
海外では方言など日本の文化的背景が理解されていないことも多く、ターゲット言語のスラングや現地にある実際の習慣などにローカライズした翻訳が必要です。
ローカライズが難しい場面では、原作の雰囲気などを損なわないように新たな解釈を生み出す必要もあるため、一部創作が必要になるケースもあります。
原作アニメの面白さを忠実に表現するためには、ターゲット言語に合わせたローカライズは欠かせません。
日本のアニメが高く評価されているのも、これまでアニメへの熱意と高い専門性を持った翻訳家たちが努力した結果といえるでしょう。
②ストーリー性とキャラクター描写を深める表現力
アニメの面白さは、面白いストーリー展開はもちろん、登場するキャラクターの魅力にあります。
日本のアニメは緻密なストーリーや細部までこだわった描写、音楽や効果音など、完成度の高さが海外から評価されています。
そのため、アニメを翻訳する際は、大枠のストーリーだけでなく、キャラクター描写やそれぞれの関係性、背景描写など、豊かな表現力が重要です。
ただストーリーをなぞって翻訳するだけでは、キャラクターの印象が薄くなり、印象も薄くなります。
正確にストーリーやキャラクターを表現するためにも、十分な原作知識と深いキャラクター理解が欠かせません。
また、アニメ翻訳の場合には吹き替えを行うケースも多くあるため、声優がよりキャラクターに感情移入しやすいような翻訳も求められるでしょう。表現力が高く、まとまった翻訳であれば、声優もキャラクターや場面を理解しやすく、豊かな表現ができます。
③アニメの世界観に対する理解力
原作アニメを正しく理解するには、ストーリーやキャラクターの感情、性格、舞台設定など、細部まで理解する必要があります。
日本アニメのキャラクターは「なのだ」や「にゃ」など、独特の語尾がチャームポイントになっているケースもあり、再現するには高い理解力が重要です。
ちょっとしたニュアンスの違いでも、アニメのメッセージ性が伝わらなくなってしまえば、視聴者にアニメの魅力は伝わりません。
また、誤った解釈をされてしまうとその後のストーリー進行に影響がでてしまい、不評となってしまう可能性もありえます。
特にキャラクターへの理解力がないと、原作ファンに落胆されてしまいかねません。
キャラクターの言動や性格、作中の効果音など、細部まで理解したうえで、翻訳できるとアニメの魅力も伝わりやすくなるでしょう。
④日本語力(海外から輸入したアニメの翻訳の場合)
海外から輸入したアニメを日本語に訳す場合、日本語力も重要なポイントです。
海外で人気のキャラクターが日本ではどんな口調で話すのか、アニメ視聴者にわかりにくい表現がないかなど、視聴者目線で想像を働かせるのも必要になるでしょう。
そしてキャラクターの魅力をわかりやすく描写するためには、細かなニュアンスを原作アニメから感じ取り、日本語の多彩な表現力を駆使していくことが大切です。
アニメの翻訳家を目指すならフェロー・アカデミーへ
日本のアニメは海外でも高い評価を得ていて、さまざまな国で放送されています。
アニメ翻訳の需要も高く、今後は海外からの輸入アニメを日本語に翻訳するパターンもありえるでしょう。
アニメはコミカルな表現が多く、キャラクター描写や独特の世界観を正しく翻訳するには、高い専門性と表現力が必要です。
現地にローカライズさせるための深い理解力も必要なため、ほかの翻訳家よりも求められるスキルは多いといえます。
アニメの翻訳家を目指すなら、独学で勉強するよりもフェロー・アカデミーのような翻訳学校で基礎から知識を身につけるのがおすすめです。
フェロー・アカデミーは、日本最大級の翻訳者ネットワーク「アメリア」とも連携し、お仕事につながるサポートが得られます。
実際に翻訳者として活躍している講師陣は、映画や絵本、アニメなど、さまざまなジャンルを取り扱ってきたプロです。
効率よく翻訳家を目指したい方は、ぜひ一度資料請求してみてください。
その後、翻訳者を志し退職、フェローアカデミーの「ベーシック3コース」を修了し、翻訳者として5年間活動した後、翻訳者ネットワーク「アメリア」立ち上げに参画、理事長/代表取締役に就任。