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『フランス人は10着しか服を持たない2』

神崎朗子さんが翻訳を手がけた『フランス人は10着しか服を持たない2』をお届けします。
2015年の実用書・ノンフィクション部門で年間ベストセラー第1位(日販、トーハン調べ)を獲得した作品の続編に当たる本作。
前作との違いや、著者とお会いしたときのエピソードなどを訳者の神崎さんにうかがいました。
『フランス人は10着しか服を持たない2』
『フランス人は10着しか服を持たない2』
神崎朗子【訳】
ジェニファー・L・スコット【著】
大和書房
【作品紹介】
70万部のベストセラーとなった『フランス人は10着しか服を持たない』に続く第2弾。カリフォルニア生まれの著者は、留学したパリで鮮烈なカルチャーショックを体験。なかでも、ホームステイ先の名家を取り仕切る「マダム・シック」との出会いは、その後の人生に決定的な影響を与えた。
その体験を綴ったメモワールにして、シックな暮らしを提案するライフスタイルブックでもある前作をへて、本書では「シックってどういうこと?」という根本的な問いかけに対する答えを出していく。シックな人は、ただおしゃれなだけでなく、内面から醸し出される不思議な魅力を持っている。毎日のあわただしい生活のなかで、そんな魅力を手に入れるにはどうしたらいいのか? そんな疑問に答えるための一冊。

シックな暮らしのコツの実践方法を紹介する作品

本書の前作である『フランス人は10着しか服を持たない』は、20歳の大学生だった著者がパリに留学した当時のエピソードが満載ですが、本書はその後10年以上たって、結婚して家庭を持ち、ふたりの小さな娘の母親となった著者が、現在のカリフォルニアでの生活にパリで学んだシックな暮らしのコツを取り入れ、実践する方法を模索していくようすが描かれています。

 

タイトルは担当編集者さんのアイデアで、大成功だったと思います。前書の原題は”Lessons from Madame Chic”ですので、邦題を聞いたときには、私もあっと驚きました。前書では衣食住のすべてにおいて「質のよいものを、節度をもって楽しもう」と提案しているのですが、『フランス人は10着しか服を持たない』という邦題の強烈なインパクトおかげで、年齢・性別を問わず、ミニマリスト志向や断捨離にも興味のある、幅広い読者層を獲得することができました。

 

また、「10着」がキーワードとなって、女性誌でファッション特集が組まれるなど、ちょっとしたブームを引き起こしました。本書がきっかけとなってパリ本やフランス本のブームが再燃したこともあり、タイトルの重要性を痛感しました。

 

著者は大学で演劇を専攻し、その後、作家を目指してライティング・ラボで研鑽を積みました。ほかにも、若いころから美術や音楽など、芸術にも幅広く親しんでこられたそうです。そのような背景もあってか、このシリーズは実用書でありながら、まるで小説のような雰囲気のくだりが出てきます。そうした場面は情感にあふれ情景がまざまざと目に浮かんできて、とても印象的でした。また、気さくで親しみやすいなかにも、知性と気品を感じさせる著者の語り口を、日本語でどう表現するかに腐心しました。

 

シンプルにすっきりと暮らす、家での暮らしを楽しむ、食べる喜びを大切にする、というのは、私も以前から心がけていることなので、翻訳しながら具体的なコツをいろいろと学べてうれしかったです。

 

もっと気をつけなくちゃ、と思ったのは美容関連ですね。本書でも紹介されているとおり、著者は自宅でもかなりきちんとケアをしています。また、外出の予定がなくても(仕事がはかどらなくてあせっていても)、朝からメイクをして、素敵な気分になれる服を着て、こまめに外の空気を吸うこと。そういうことでどれだけ気分が晴れやかになり、1日のリズムが整うかを実感しました。

著者は本の印象どおりの気さくな方

著者のジェニファーさんは本や動画の印象そのままに、気さくで、とても素敵な方でした。来日された際は汐留のホテルに滞在しておられたのですが、講演や取材の合い間にひとりで浜離宮に散歩に出かけて、日本庭園の花々を撮影したり、ドラッグストアで見つけた日本ならではのアイデア商品を購入して、動画で紹介したりするなど、異文化に対する興味と好奇心が旺盛で、行動的でした。 駅ビルの書店の店頭に『フランス人は10着しか服を持たない』が並んでいるのを見たときは、うれしくなって店内に入り、「これ、私の本なんです。ありがとう!」と本にサインしてきたそうです。

 

帰国後すぐに、出版社の方々や私にも、心のこもった手書きの美しいカードを送ってくださいました。そういうすべてをとおして「本物」だと感じました。また本に書いてあることはどれも、著者が心からよいと思って日々実践していることなのだな、と腑に落ちました。そういうことは、翻訳をするうえでもとても役に立ちました。

出版翻訳は、シノプシスがしっかり書けないと仕事につながらない

出版翻訳を志す方は、翻訳の勉強だけでなく、リーディングのスキルをしっかり身に着けておくとよいと思います。リーディングは、原著の概要を簡潔にまとめ、類書と比較してどこが新しいのかを分析し、日本でも読者を獲得できるか(売れるか)などについて意見を述べ、感想を伝えるという、重要な仕事です。シノプシスがしっかり書けないと、なかなか仕事につながりません。

 

私はフェロー・アカデミーで学習中に、通信講座の「リーディング講座」を受講しました。自分で書いたシノプシスを添削してもらい、よい点や足りない点を指摘していただけるので効果的です。

 

また、先生や先輩のシノプシスをお手本にいただき、何度も読んで参考にしながら、自分なりの型を作っていきました。原書を読んでシノプシスを完成するまでを1週間で行う練習をしておくと、あとで役に立つと思います。

取材協力

神崎朗子さん

出版翻訳家。訳書に『フランス人は10着しか服を持たない』、『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』、『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』『スタンフォードの自分を変える教室』(いずれも大和書房)、『ぼくたちが見た世界――自閉症者によって綴られた物語』(柏書房)など。

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