担当講師
- 三村 美智子
- Michiko Mimura
文芸翻訳家。『動物と分かちあう人生』『なにが始まるの?』『あかんぼ大作戦』(共訳)(河出書房新社)、『ちびフクロウのぼうけん』(福音館書店)など訳書多数。20年に及ぶ「ニューズレター」での翻訳などもあり。「英詩紀行」DVD5本、美しい映像で詩を紹介。
講師からのメッセージ
英語の翻訳を始める前に、知っておくと役に立つことはいろいろありますが、まず三つをあげるなら、聖書・シェイクスピア、そしてマザー・グース(Mother Goose)でしょう。この三つの分野からの引用が、たびたび英文の文章に登場してくるからです。小説や絵本、新聞や映画やビジネス物や手紙などに、多く見つけられます。たとえば、アガサ・クリスティ6、7冊のタイトルそのものが、マザー・グースからで、『そして誰もいなくなった』(And Then There were None)もその一作です。英米の読者はどのようにいなくなるか知っていても、楽しんで読むのですね。ほかにも『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』にいくつか面白く登場しますし、『1984』『動物農場』(ジョージ・オーウェル作)、アメリカ作品の『大きな森の小さな家』(ローラ・インガルス・ワイルダー作)にも出てきます。伝統童謡ともいわれるマザー・グースの言葉は、実に生活のなかにありつづけているのがわかってくるでしょう。
マザー・グースという名称は、実は古く英国で使われていた呼び名がそのままアメリカに持ちこまれました。英国では、だいぶ昔から
Nursery Rhymesと言われていますが、この言葉をみると「
Nursery(=子供部屋)
Rhymes(=韻)」で、マザー・グースの多くは、たしかに子どもの時から知っていて、大人になっても忘れない、韻を踏んだ詩の形になっています。詩のような短い言葉をきちんと訳していくことで、長い文章を訳すのに、役立つはず。なによりも、今も通じる
15世紀ごろからの詩と出会って、考えて、話し合いながら訳していく、そういう「クラス」にしたいと願います。