出版翻訳について

日本で翻訳出版される海外の作品には、大きく分けて「フィクション」「ノンフィクション」のジャンルがあります。
原書の世界観を著者に代わって日本の読者に届けられるというのが、この分野の最大の魅力です。

出版翻訳者になるには

講師からの下訳や共訳の仕事を紹介されデビューする、リーディング(原書のあらすじや感想をレジュメにまとめる仕事)がきっかけで翻訳を依頼される、本を発掘し出版社に企画を持ち込む、コンテストで入賞する、といった方法があります。

出版翻訳のジャンル

出版翻訳には、大きく分けてフィクション・ノンフィクションのジャンルがあり、さらに対象読者や内容によってミステリーやロマンス、ビジネス書や自己啓発書、児童文芸(絵本やヤングアダルト)などに分かれます。


フィクション

・ミステリー…根強いファンが多く、コージーミステリーなど王道以外のジャンルもある。
・ロマンス…多くの出版社がロマンス作品用のレーベルを持っているため、需要が安定している。
・絵本…ベストセラーよりロングセラーとして長く愛される傾向がある。
・ヤングアダルト…中高生向け。海外では大きな市場のため需要がある。流行や時世を反映したものが多い。


ノンフィクション

・ビジネス書/自己啓発書…日本での翻訳出版点数が多く、ベストセラーが生まれやすい。
・ポピュラーサイエンス/ルポルタージュ…常に一定のニーズがあるため、需要が安定している


フェローの出版翻訳コースもフィクション・ノンフィクション・児童文芸のジャンルで講座をラインナップ。以下に講師の代表作品の一部をご紹介します。


フィクション

「スクイズ・プレイ」
田口俊樹(訳)
ポール・ベンジャミン(著)

米文壇を代表する作家ポール・オースターがブレーク以前に「ポール・ベンジャミン」という別名義で発表していた幻のデビュー作にして正統派ハードボイルド小説の逸品。

「リプリーをまねた少年」
柿沼瑛子(訳)
パトリシア・ハイスミス(著)

映画『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』の原作者でもあるハイスミスによる「リプリーシリーズ」の第四作。

「エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人」
芹澤恵(訳)
S・J・ベネット(著)

90歳の英国女王が奇怪なピアニスト殺人事件に挑むミステリー。英国で10万部突破し、18カ国で翻訳された。

「葬儀を終えて〔新訳版〕」
加賀山卓朗(訳)
アガサ クリスティー(著)

1953年発刊のポアロシリーズ25作目。意外な結末を迎える傑作ミステリの新訳版。

ノンフィクション

「Think CIVILITY(シンク シビリティ) 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である」
夏目大(訳)
クリスティーン・ポラス(著)

ビジネスでも人間関係でも最強の武器になる礼節の力を、MBAで「職場の無礼さ」を研究する著者が徹底解説。全米で10万部のベストセラーとなった。

「指揮者は何を考えているか:解釈、テクニック、舞台裏の闘い」
松村哲哉(訳)
ジョン・マウチェリ(著)

著者はアメリカの指揮者・教育者。著名な音楽家のエピソードも満載で、ディープな音楽ファンにも楽しめる内容になっている。

「1493――世界を変えた大陸間の「交換」」
布施由紀子(訳)
チャールズ・C. マン (原著)

タイム誌2011年度ベスト・ノンフィクション部門第1位獲得。厖大な文献と綿密な現地取材をもとに、コロンブスのアメリカ大陸到達後の激動の世界をいきいきと描き出した圧巻のノンフィクション。

児童文芸

「111本の木」
こだまともこ(訳)
リナ・シン(著)

女児の誕生を111本の木を植えて祝う、インドの村の活動を描いた実話。SDGsの目標である、環境保全とジェンダー平等を考える絵本。課題図書にもなった。

「100歳ランナーの物語: 夢をあきらめなかったファウジャ」
おおつか のりこ(訳)
シムラン・ジート シング(著)

生まれつき足が弱く、5歳まで歩けなかった主人公が、決してあきらめず史上最年長の100歳でフルマラソンを完走する感動の伝記絵本。

「サイド・トラック: 走るのニガテなぼくのランニング日記」
武富博子(訳)
ダイアナ・ハーモン アシャー(著)

ADD(注意欠陥障害)があり、集中しなくてはいけないときに気が散ってしまう主人公が、陸上競技クラブでクロスカントリーに挑戦する。陸上競技を通して“大切なもの”をえがく物語。

出版翻訳の仕事の流れ / 報酬

出版翻訳の仕事の流れ

出版翻訳の仕事の目的は、海外の著作物を日本で出版することです。仕事の発注元は出版社で、編集プロダクションというエージェントが介入する場合もあります。
翻訳者は仕事を受注したら、全編をひとりで訳すことが多いですが、複数で共訳するケースもあります。
翻訳以外にも、出版社が海外の著作物を日本で出版するかどうか検討するため、原書を読んであらすじや感想をレジュメ(シノプシスとも呼ぶ)にまとめる「リーディング」という仕事もあり、これも出版翻訳者にとって重要な仕事です。
出版翻訳では、作品のテーマをきちんと把握し、対象読者を意識しながら原作にふさわしい日本語で表現しなければなりません。また、あくまでも最終表現である日本語を評価されますので、文章力も磨く必要があります。一朝一夕に実力がつけられる分野とはいえませんが、自分の言葉で日本の読者に感動を伝えられる喜びは、出版翻訳ならではのやりがいと言えます。

出版翻訳の報酬

印税方式がほとんどで、書籍の定価×刷り部数×印税率(4~8%)、リーディングは1冊あたりにつき10,000円~30,000円程度