下村万実さん
フリーランス特許翻訳者。大学卒業後、特許事務所で約9年間勤務。翻訳学校で実務翻訳を1年半勉強し、2014年10月から特許翻訳者として働きはじめる。その後、2019年4月~2023年3月にフェロー・アカデミーの出版翻訳コース(ライブ配信講座および通学講座)を受講。「受講生×出版社 紹介サポート」で優秀なシノプシスに選出され出版社に紹介される。
フリーランス特許翻訳者。大学卒業後、特許事務所で約9年間勤務。翻訳学校で実務翻訳を1年半勉強し、2014年10月から特許翻訳者として働きはじめる。その後、2019年4月~2023年3月にフェロー・アカデミーの出版翻訳コース(ライブ配信講座および通学講座)を受講。「受講生×出版社 紹介サポート」で優秀なシノプシスに選出され出版社に紹介される。
フェロー・アカデミーに入学したきっかけは、2年間の期限つきで東京で暮らしはじめたことです。当時はライブ配信講座が始まる前で、首都圏以外の地域では出版翻訳を学ぶ機会が限られていました。もともと本が好きで出版翻訳に興味があったため、基礎からじっくり学べるチャンスは今しかないと思い、通学講座の出版翻訳コースに申し込みました。
最初の頃は専門とするジャンルをしぼらずに、「出版基礎」や「出版総合演習」といった初・中級講座や、習いたい先生の上級ゼミ(「芹澤ゼミ」)を受講しながら、色々なジャンルの原書を読んでいました。その時期に、ヤングアダルト(YA)という主に中学・高校生を読者対象とするジャンルを知ったことから、子どもの本(児童書)に興味を持ちました。YAでは、多感な十代の若者の気持ちが丁寧に描かれていて、この世代の読者なら、より共感できるだろうなと思いながら、興味深く読みました。その後、もう少し対象年齢の低い児童書も読みはじめたのですが、こちらもプロットに起伏があったり、魅力的な登場人物が登場したり、読者の子どもをあきさせない工夫がこらされていて、とてもおもしろいと思いました。
子どもの本の世界は、普遍的な価値観から現在的な問題まで、様々なテーマがあつかわれていて、バラエティー豊かです。そして、シリアスなテーマの作品であっても、どこかに希望を感じられるところが魅力的です。社会の変化が大きい時代に生きる子どもたちにとって、世の中について考える一つのきっかけになるような本を、また、時代が変わっても大切にしたい価値観などを学べる本を届けたいと思い、このジャンルを専門的に学ぶことに決めました。
こうして専門ジャンルをしぼり、次に児童書の翻訳に特化した中級講座である、武富博子先生の「児童文芸」を受講することにしました。
この講座を受講する頃には、東京から関西に帰ってきていましたが、ライブ配信講座が開設されたことにより勉強を続けることができました。ライブ配信講座は、通学ができないところに住んでいても、通学講座とほぼ同じスタイルで受講できるため、大変ありがたい形式だと思っています。
授業は、毎回3~4名の当番が事前に提出した訳を見ながら、先生や他の受講生が気づいたことを指摘するという形で進みました。自分が当番のときは、修正案などのコメントをいただくことができますし、他の受講生が当番のときは、自分では思いつかない訳に出会うことができます。このような相互的なやりとりに加え、先生から随時、児童書における漢字と平仮名のバランスやカギカッコの使い方などの基本的なことから、作品の解釈のような応用的なことまで、バランスよく教えていただきました。回を重ねるごとに蓄積されていく訳語のバリエーションや翻訳のテクニックを次の翻訳に生かすことで、少しずつですが確実に上達していることが実感できました。また、講座であつかった3つの作品はどれも雰囲気が違い、それぞれの作品にあった文体や語彙や表現を考える勉強になりました。
先生は、穏やかで親しみやすいお人柄ですが、受講生の訳について指摘されるときは、はっきりとわかりやすく修正の理由も含めて指摘してくださるため、どうしてそのように修正するのか記憶に残りますし、その場かぎりではなく応用が利きます。また、疑問にも丁寧に答えていただけるため、きちんと理解したうえで、納得することができました。この講座で学んだことは、児童書の翻訳の基礎知識となり、後に受講した上級ゼミ(「こだまゼミ」)でのより深い学びにつながったと思います。
「児童文芸」でのなにより大きな学びは、作品全体を俯瞰しつつ、その中の一部分(場面やエピソードなど)の意味を考えるようになったことです。当然ながら、場面やエピソードというのは、ばらばらに存在しているわけではなく、有機的につながって、一つの物語を作り、作品のテーマやメッセージを伝えています。一つの場面が後の場面の布石になっていたり、エピソードや台詞から登場人物の性格がわかったり、ある描写に作者の思いがこめられていたり。講座で課題を訳すときは、一回一回は部分訳になりますが、先生が折にふれて全体の中でそれぞれの部分が持つ意味について話されているのを聞いて、一部分から全体を見ること、また逆に全体から一部分を見ることの大切さに気づきました。
この視点が、シノプシスを書くときにも、コンテストなどで部分訳をする際にも役立ちました。おかげで、フェロー・アカデミーが実施する「受講生×出版社 紹介サポート」では、私が書いたものを優秀シノプシスに選出していただけましたし、季刊誌の誌上翻訳コンテストでは最優秀賞を受賞することができました。
今後は、児童書の翻訳の勉強を続けながら、訳したい良書を探していきたいと思っています。自分自身が子どもの頃はファンタジーなど、どちらかというと現実ばなれしたものを好んで読んでいましたが(そして、今でもそういう作品は大好きですが)、最近は、社会的なテーマをあつかう児童書もよく読んでいます。特に興味があるのは、アメリカの児童書のなかで、アフリカ系、ラテン系、アジア系、アメリカ先住民など、独自の歴史的・文化的背景を持つ作家が、それぞれの背景を反映させた作品です。また、機会がありましたら、リーディングの仕事やシノプシスの持ち込みにも挑戦したいと思っています。
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初級出版基礎
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中級出版総合演習
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上級芹澤ゼミ【編入】
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中級児童文芸
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上級こだまゼミ【編入】