佐藤朝子さん
28歳の時に映像翻訳の通学コースに入学。2013年にフリーランス映像翻訳者として独立し、映画『ザ・ファイター』『エグザム』『ホテル・ルワンダ』(吹替)、TVシリーズ『トランスフォーマー プライム』(吹替)など幅広く翻訳を手がけている。
28歳の時に映像翻訳の通学コースに入学。2013年にフリーランス映像翻訳者として独立し、映画『ザ・ファイター』『エグザム』『ホテル・ルワンダ』(吹替)、TVシリーズ『トランスフォーマー プライム』(吹替)など幅広く翻訳を手がけている。
「生きた言葉」を使う仕事にあこがれ、映像翻訳の世界へ
母の影響で洋画や海外ドラマを子どもの頃からよく見ていて、将来は翻訳を仕事にできたらいいなと思っていました。映像翻訳を選んだのは、会話や人物の台詞といった「生きた言葉」に関心があったから。いずれは翻訳スクールに通いたいと考えていたものの、ようやく翻訳者になるための1歩を踏み出せたのは28歳の時でした。
まず初級の「映像基礎」で、字幕翻訳と吹替翻訳の両方を学びました。授業はクラスの全員が同じ課題を翻訳し、皆でディスカッションするという形式でした。クラスメートの翻訳に触れ、自分とは違ういろいろな表現を知ることができ、本当にいい勉強になりました。講師は瀧ノ島先生で、第一線で活躍中のプロの先生から実際の仕事の話を聞けたこともよかったです。
中級・上級の講座では吹替翻訳に絞って学びました。入学前、字幕翻訳の知識はあったのですが、「映像基礎」の授業で初めて吹替翻訳をやってみたら面白いな、と。よく考えると、子どもの頃によくテレビで見ていた洋画やドラマのほとんどは、吹替版だったんですよね。実は吹替翻訳は、とても身近な存在だったことを再認識しました。
先生の仕事を手伝ううちに人脈が広がった
私が仕事を始めたきっかけは、先生からの紹介でした。その先生の仕事を手伝うようになり、徐々に人脈が広がって仕事も増えていきました。そして、今年フリーランスとして独立し、アメリカで大ヒットしたホラードラマシリーズの吹替翻訳を担当しています。
長期にわたるシリーズものでは、登場人物の性格がわかってくると、愛着がわいて台詞が訳しやすくなり、声優さんが実際に演じてくれるアフレコの立ち会いも楽しくなります。また、翻訳者もチームの一員として日本語版の制作に取り組むので、チームワークもできてきます。複数の翻訳者で分担する場合は翻訳の仕方などいろいろと情報交換ができるのも貴重です。
映像翻訳は豊富な語彙力が不可欠です。クライアントにより表現の好みや使用ルールが異なることも多く大変な面もありますが、いかに分かりやすく自然な日本語にできるかが腕の見せどころでもあり、やりがいを感じています。
『翻訳事典2015年度版』(アルク発行)より転載