佐渡麻衣子さん
大学卒業後に就職した建設会社を退職後、より専門性の高い仕事をしたいと思い、翻訳者を目指す。2011年に「カレッジコース」を受講。修了後は、翻訳会社で見習い翻訳者(IT・特許)としてキャリアを積み、現在は医薬系翻訳会社から製薬会社に出向し、厚労省に提出するための新薬の副作用に関する報告書を作成している。
大学卒業後、都内の企業に就職したが、より専門性の高い仕事をしたいという思いが年々強くなっていたと語る佐渡麻衣子さん。「ある日何気なくネットを眺めていたら、ある翻訳家さんが目に留まりました。凛とした品のある姿に一目で惹かれ、わたしもこんな素敵な女性になりたいと感じました。今振り返っても、興味をもったきっかけは直観的だったと思います」
その翻訳家が教鞭をとるカルチャースクールにも通い、ますます翻訳に興味を持ったものの、職業にするとなるとなかなか行動に移せなかったという。「企業に勤めて3年を過ぎた頃、意を決して会社を退職しました。語学自体をきちんと学習したことがなかったので、じっくり1年間学べるフェローのカレッジコースに通うことにしました」
カレッジコースで「実務」「出版」「映像」と、さまざまな分野の翻訳を学んだことは現在の仕事でも役立っているそうだ。「出版翻訳の授業では、読点の打ち方、ひらがなと漢字の使い分けなど日本語に徹底的にこだわることを学び、映像翻訳では文字数をコンパクトにし、短時間でぱっと頭に入ってくる表現の工夫を学びました。これらのことは翻訳をするうえで分野を問わず、応用できることだと思います。そして、これもフェローで教わったことなのですが、とにかく時間の許す限り、1単語1単語しつこく辞書を引いています。中学生で習うような一見易しいレベルの単語ほど、実際の仕事では特殊な訳を用いる場合が多々見受けられます。これらの教えを日々意識しながら仕事をしています」
受講中から仕事に向けた準備を積極的に進めていた佐渡さんは、カレッジコース修了後すぐに、翻訳者ネットワーク「アメリア」から応募し採用された翻訳会社で見習い翻訳者としてキャリアをスタート。そこで1年間経験を積んだことが、現在の医薬系翻訳会社に就業するにあたってアピールになったそうだ。「新卒での就職活動ではかなり苦労した覚えがありますが、フェローで翻訳を学んだあとは嘘のようにすんなりと仕事が決まっていきました。受講中に取り組んだ翻訳ボランティアの経験も生きています。翻訳が未知の世界だったこともあり、好奇心から参加しましたが、翻訳業界ではさまざまな経験を積めば積むほど仕事を得やすくなる実感があります」
翻訳の仕事は「マンネリ」とは無縁――。そのやりがいと難しさについてはこのように語る。「かなりの分量を短期間で完成させなければならないというプレッシャーはありますが、翻訳をしていると研究者、医師、薬剤師などさまざまな職業を疑似体験できることにやりがいを感じています。わたしが主に翻訳しているのは、厚労省に提出するための新薬の副作用に関する報告書です。世界中で実施されている治験において、どんな患者さんがどの薬を服用し、どんな有害事象を発症したのか、それは薬と関係あるのか、またその結果どうなったのかといった内容です。自分の翻訳が最終的に人様の健康に繋がるなんてこんなに嬉しいことはありません」
海外在住経験も英語を使った仕事の経験もない状態からのスタートだったが、順調に翻訳の実績を積み重ね、今では生涯をかけて取り組める職業であると感じているという。「翻訳は勉強だけでも奥深く楽しいですし、実際の現場でも得られることがたくさんあります。少しでも翻訳に興味があるなら、まずは行動してみることを強くおすすめします」